「6カ月休校のイタリア」授業再開で広がる不安 感染者が学校で見つかった場合の「対策」は?

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イタリアの3大新聞の1つ「La Repubblica」の9月8日の報道では以下の通り。

●クラスに症状のある生徒が見つかった場合 37.5度以上の発熱、またはコロナウイルスへの感染が疑われる症状のある生徒が出た場合は、各学校のコロナ担当者はその生徒を別室に隔離。該当生徒に接触する担当者は、マスクと安全距離の確保をしながら、両親に連絡を取る。両親は学校へ速やかに迎えに行き、かかりつけ医に連絡。電話でのトリアージを通じて、PCR検査をするかどうかの判断をする。
●検査結果が陽性だった場合は、その旨を公にし、接触者の追跡や学校設備のウイルス除去作業を行う。陽性の生徒は完全に症状が消え、24時間あけて2度の検査で陰性が確認されるまで学校には戻れない。
●検査結果が陰性だった場合でも、2~3日後に再度検査を行い、完全な陰性が確認されるまでは自宅隔離とする。
●検査で陽性の生徒・職員が見つかった場合は、48時間にさかのぼって濃厚接触者を追跡調査する。学校は追跡調査がしやすいような名簿を作成しておくこと。
●濃厚接触者は、最後の接触から数えて14日間自宅隔離。直接ではない接触者、例えば陽性患者と同じクラスの生徒の両親は、隔離の必要はない。

こんなふうに、ばか丁寧と言ってもいいぐらい事細かく説明されている。これぐらいわかるだろう、ではなくて、わからない人がたくさんいる、という前提。悪くないと思う。

マスクについての議論

学校の再開に向けて、専門家委員会は「学校では使い捨ての外科用マスクを使用」という発表をし、それに対して議論が巻き起こっている。専門家委員会は「学校に毎日新しい使い捨て外科用マスクを1100万枚配布する」と約束したのだが、お母さんたちは「そんなこと(遅延なく、毎朝きちんと届くなんて)できるわけがない」と言い、環境保護団体は「再利用できる布マスクでも感染を防ぐ効果ありと認証を受けたものを使うべき。プラスチックやゴミの削減が世界的な課題になっている今、子どもたちにどんどん捨てることを教えるのは教育的にも経済的にも環境的にも問題あり」と反撃する。1100万枚のマスクを毎日捨てるということは、44トンのゴミが増えるという計算になるそうだ。

トリノの旧市街を走るトラム(市街電車)。バス同様、市民の足として重要な役割を担う(写真:筆者提供)

バスなど公共交通機関を利用することへの、心配の声も大きい。ロックダウン解除直後は、バスなどの乗車率は50%と言っていたのに、少しずつ緩和され、学校再開に向けた今では80%までOKということになった。これを聞いたバスや電車のドライバー組合は、われわれの健康はどうなる!と怒っている。そしてなんと、トリノのバス会社は9月14日、一斉ストライキをするという。9月14日、そう、学校再開の初日にだ。

保護者たちの間でも、自分の子どもが混んだバスや電車に乗るのを心配する声が多いのは当然だ。だから自家用車で送り迎えする人が増えるのは必至で、つまり渋滞もスモッグも増加するだろうということ。

この原稿をアップしようとしていた9月10日、こんなニュースが飛び込んできた。「学校再開に向け、全国の教員と学校関係者の50%(約50万人)に抗体テストをしたところ、約1万3000人が陽性。該当者は現在PCR検査中で、陰性が確認されるまで業務に就くことはできない」。学校が再開し、ようやく日常が戻ってくるのか?というほのかな期待に、またまた不安のヒビが入る。安心して暮らせる日はいつ戻ってくるんだろう。そんなイタリアの現状だ。

宮本 さやか ライター

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みやもと さやか / Sayaka Miyamoto

1996年より、イタリア・トリノ在住。イタリア人の夫と娘と暮らしつつ、ライター、コーディネーターとして日本にイタリアの食情報を発信する。一方、イタリア料理教室、日本料理教室、そしてイタリアの人々に正しい日本の食文化を知ってもらうためのフードイベントなども行っている。ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」

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