メーカーの商品開発に「物申す」顧客が必要な訳 ドイツのスポーツクラブとモノづくりの共通点

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ifLinkそのもので収益が上がるわけではない。「コミュニティの中でアイデアでも技術でもなんでもいいから出してほしい。Give and giveさらに giveが大切でセコいのはだめ。これを繰り返しているうちに利益につながるものができてくる。当社はとにかく技術、要望、アイデアをつなげる場を作ることに集中する」と島田氏は言う。

このコミュニティで求められるものを煎じ詰めると「創造性」であろう。教科書的にいえば、創造性は多様な背景を持つ人との交流で発揮される。特に「共創コミュニティ(使う側)」は年齢や性別、属性などがより多様であるほうが、面白い発想が出てくる可能性が高い。

このとき、カギになるのは風通しよく、対等な関係のコミュニケーションができるかどうかだ。「作る側」は違法性がなく、通常使用での安全性のあるものを作ることは必須。しかし、必要以上に「使う側」に対して媚びへつらう必要はない。また「使う側」も、「お客様は神様」といわんばかりの態度ではコミュニケーションが硬直化する。

つまり大切なのは「交流の質」。これについて島田さんから意外な言葉が出てきた。「ドイツのスポーツクラブを1つの理想として考えている」(島田氏)。実はこれが、筆者がifLinkに興味を持った理由である。

ドイツ全国で約9万の「スポーツ同好会」

ドイツは、規模は小さくとも、スポーツや文化が整い、生活の質の高い町が多い。そういった町が実現する理由の1つに、人々の社交や議論が盛んな点がある。これが下からの民主主義につながり、都市内の問題を解決に導く。ひいては、スポーツや文化など生活の質を高めようという動きにつながっている。

その苗床の1つが「フェライン」と呼ばれる非営利組織である。協会やクラブといった定訳があるが、今の日本の感覚でいえばNPOと捉えると理解しやすい。島田氏の口から出た「スポーツクラブ」もその1つである。「スポーツクラブ」というと、会員制の私企業が経営するフィットネスクラブの類を想像する読者諸氏もいるかもしれないが、ドイツのそれは組織形態がまったく異なる。

メンバーは老若男女。日本の学校のように部活がないので、子供たちもスポーツをしたければスポーツクラブのメンバーになる。活動内容も、試合で頑張る人から、健康や体力づくり、メンバー同士の交流に楽しみを見出す人まで幅広い。つまり社会全体の「スポーツ同好会」と考えるとわかりやすい。

ドイツでスポーツをする場合「スポーツクラブ」が主流。スポーツを軸にしたコミュニティがある(筆者撮影)

競技もサッカー、体操、水泳、テニス、柔道など豊富。またこれらの競技を単体で扱うクラブから、複数扱うものまでさまざまだ。しかも数も多く、ドイツ全国で約9万件を数える。筆者が住むエアランゲン市(バイエルン州)は人口11万人程度だが、100程度のスポーツクラブがある。ドイツの人々にとって身近な「スポーツインフラ」だ。

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