寿命が「運命任せ」から「選択」の時代に変わる訳 「老いなき世界」はどこまで科学されているのか

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一方、日本人は「これ食べると元気になる、骨が増えます」という宣伝を見て、「よくわからないけど、安いし、飲んでおくか」というような具合です。自分で選択する、その選択に責任を持つという感覚が日本人は希薄だと思います。

ただ、今後、老化を自分でコントロールできるようになれば、日本の人たちも、自分で何を飲んで、食べ、どんなライススタイルを送っていくのかを取捨選択するという認識が強まります。そうなるともう少しファクトとサイエンスを意識するようになるのではないでしょうか。

グーグルが老化研究に投資する理由

日本では、商社などが科学的根拠に基づいたエイジングの制御というビジネスを始めていますが、まだ個人的に危機感を持ってエイジングに投資するという人は少ないですね。

2013年にグーグルが15億ドルを投資して、老化研究の企業カリコを作りましたが、あれは老化研究がアメリカにおいてビジネスになると見抜いての投資でしょう。アメリカの場合は民間会社がそれを保険適用すると言えば、マーケットとして成立します。

しかし日本の場合は、老化とともに筋肉が減少していくサルコペニアという症状が、2016年にやっと病気として認定されましたが、老化研究に関わる領域に、保険適用されていない疾患や薬がまだまだたくさんあって、マーケットにならないのです。

日本の保険会社も、健康の度合いに応じて保険料が安くなるとか、デジタルヘルスやAIの活用なども増えてきていますので、自分の健康状態を保険会社が把握して、自分でも健康状態を理解し、保険料が安くなるならがんばろうというようなアメリカ型も少しずつ浸透しつつあります。ただ、そもそも医療に大金を支払うという感覚が、日本人にはありませんからね。

しかし、日本でも健康寿命を延ばせる技術が出てくれば、どうしても人によって差が出てきます。

例えば、高齢出産について考えてみましょう。女性が何歳まで出産できるのか、男性が何歳まで子どもを作れるのか、これはエイジングの話です。通常は30代で高齢出産になりますが、高価なサプリを飲んでいる人は50代でも健康な子どもが産めるということになると、やはりお金のある人しか、余裕をもって子どもを作り、人生設計をするということができなくなってしまいます。

もちろん、いままでどおりを望むのもいいのですが、選択としてどう捉えるかという視点を持てば、単純に「老化研究はここまで来ているんだね」という理解だけでなく、自分自身のこととして受け止めることができるのではないでしょうか。そして、老化や寿命は「自分」のこととして受け取られがちですが、実際には自分の家族や社会にとっても大きな選択となっていくでしょう。

そして、お金がすべてという話でもありません。

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