寿命が「運命任せ」から「選択」の時代に変わる訳 「老いなき世界」はどこまで科学されているのか

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つまり、我慢をしてまで寿命を延ばすということは、一般的には受け入れられない。もっとラクをして寿命を延ばしたいという要望があるわけです。

1990年代になると、サーチュイン系の遺伝子が寿命やカロリー制限の責任を担っていることがわかり、2000年代には老化を抑える物質として、レスベラトロールやNMNなどが注目を浴びるようになりました。

早野元詞(はやの もとし)/慶應義塾大学医学部特任講師、株式会社坪田ラボ Chief Scientific Officer(CSO)。老化、エピジェネティクスが専門。DNA複製研究に従事し、2011年に東京大学大学院新領域創成科学研究科博士課程(生命科学)にて学位を取得。アメリカ・ハーバード大学医科大学院のデビッド・A・シンクレアのラボに留学後、2017年から現職。ANRI株式会社、株式会社慶應イノベーション・イニシアティブなどのベンチャーキャピタルでシーズソーシング業務に携わっている(写真:早野元詞)

NMNは『ライフスパン』にも書かれていますが、カロリー制限をしなくてもプロダクティブエイジング(歳を重ねても自分らしく過ごすことができる人生)が可能になるもので、サプリは日本でも販売されています。

最初の論文から100年近くかかって、ようやく何かを飲むことで老化を制御できるようになった。つまり、自分が今まで運命だと思ってきたことに、自分の手で変化を加えることができるようになったのです。さらに老化細胞や血液交換術などいろんなことが知られてきて、節制する、我慢するという時代から、もっと積極的に自己選択するものへと変化しはじめています。

そうした中で、資産家の老化研究への投資を含めてアメリカやヨーロッパを中心に老化研究が進んでおり、今後超高齢社会の日本でも老化研究や開発を支援する枠組みが増えていくことを期待しています。

日米の保険制度と予防意識の違い

日本人がアメリカ人より予防意識が低いのは、保険制度の違いが原因でしょうね。日本は国民皆保険制度がありますから、風邪を引いて病院で治療を受けても数百円で済みます。

しかし、アメリカでは数万円の治療費がかかります。今回の新型コロナでも、日本では1万円程度のPCR検査費用でもめていましたが、アメリカでは感染した高齢の男性が、1億円以上の治療費を請求されたという話がありました。でもそれはアメリカなら当たり前の話なんです。

アメリカ人は、普段から自分の健康を管理しておかなければ、破産して家族全員が路頭に迷うことになってしまう。だから、病院に行かずに、サプリや薬局で済ませる意識が日本より強く、長生きしたいというよりは、自分だけでなく家族の生活を守るためにも健康を管理し、予防するという意識が高いんですね。実際に行動に移せているかは別の話ですが。

サプリも、それがどういう役割を果たすのかということを自己選択しなければなりませんから、サイエンスのリテラシーも高く、自分で科学書を読み、かなり調べて知っているという人が多いです。

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