「アマゾンの会議」でパワポ資料がNGな理由 ジェフ・ベゾスが気づいた「箇条書き」の盲点

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なぜアマゾンでは箇条書きやパワーポイントが禁止されているのでしょうか。それは箇条書きだと、行間を読むことで、人によって解釈の違いが生じやすいからです。

また発表者も行間にさまざまな思いや考察を埋め込んで説明することが多いので、後日それらを思い出そうとしても非常に難しいからです。皆さんも、先週行われた会議の内容を事細かに思い出すことはできないと思います。それが、箇条書きのパワーポイント資料だとより顕著に表れてしまうということです。

例えばパワーポイントのプレゼン資料に「最高のカスタマー・エクスペリエンスを提供します」と書いておいて、そのために具体的に何をやるのかは、プレゼンの当日に口頭で説明するとします。

そうした場合、会議の出席者には詳細がその場で伝わるかもしれませんが、後日その資料を見直したときや、その会議に参加していない他者がその資料を見たときにはどうでしょう。「たしか、こういう話だっただろう」とか「こんなことをするって話だよね」と勝手に解釈してしまい、資料に書かれた真意がうまく伝わらない可能性があります。

そしてこうした誤解は、当初は小さなブレでも、時間が経つにつれ大きな解釈のブレになりかねません。その結果、最終的なアウトプットが大きくずれてしまい、本来の目的が達成できないという結果になってしまうことも考えられます。

小さな組織で、日頃から顔を合わせて、職場の状況や互いの考え方がわかっていれば、そういう問題は起こりにくいでしょう。でも組織が大きくなるにつれて、互いの状況が見えにくくなると、そう頻繁に確認もできません。

アマゾンも小さな組織だったときには、お互いの意思疎通についてそれほど気にすることはなかったと思います。会議資料をパワーポイントで作成し、箇条書きもよく使われていました。しかしグローバル企業として成長していく中で、従業員や関係者の人数が膨大になって組織内での意思疎通が容易ではなくなり、その弊害が看過できなくなったのです。

そこで、ベゾスが2006年頃に設定したのが、「会議の資料は箇条書き禁止。ナレーティブを用いる」、つまり文章で書くというルールです。

ベゾスは、おそらく週に何十件という報告を受ける身です。なので人一倍、箇条書きの問題点に頭を悩ませていたのでしょう。

パワポの資料は会議の効率性を落とす

伝達内容のズレ以外にも、パワーポイントの箇条書き資料には問題があります。

文章の資料を何枚も書くのは骨の折れる作業ですが、パワーポイントによる箇条書きの資料は、比較的容易にすぐ作れます。枚数を気にせず思いついたことをスライドに列挙していき、会議当日は適当に飛ばしながら口頭で説明することも可能です。いわば「やっつけ仕事」での資料作成が可能なのです。

しかしきちんとした文章にするとなると、読んだときにつじつまが合わない部分が出てこないように、最初から整合性をとらなくてはなりません。そのため、吟味に吟味を重ね、適切な情報を用いて推敲を重ねなければなりません。

エッセンスだけを凝縮して、それを文章にまとめようとすると、必然的に何回も書き直しをしなくてはならなくなります。おそらくベゾスは、そのようにじっくり検討して推敲するプロセスも期待して、この会議の資料作りのルールを考えたのだと思います。

佐藤 将之 エバーグローイングパートナーズ代表取締役/事業成長支援アドバイザー

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さとう まさゆき / Masayuki Sato

セガ・エンタープライゼスを経て、アマゾンジャパンの立ち上げメンバーとして2000年7月に入社。サプライチェーン、書籍仕入れ部門を経て、2005年よりオペレーション部門にてディレクターとして国内最大級の物流ネットワークの発展に寄与。2016年、同社退社。現在は鮨職人として日本の食文化の発展に携わるとともに、成長企業での15年超の経験を生かし、経営コンサルタントとして企業の成長支援を中心に活動中。著書に『アマゾンのすごいルール』『アマゾンのすごい問題解決』(宝島社)、アマゾンのスピード仕事術」(KADOKAWA)、などがある。

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