デスクワークで「体がつらい」をラクにするコツ 現役医師が考案した「押し流しマッサージ」

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「首を下に曲げて、左右に倒すと痛い」のであれば、この「僧帽筋」がこっています。この姿勢で首から肩にかけての「僧帽筋上部」のあたりに痛みを感じるなら、その姿勢のまま、そろえた指のふくらみを使い首から肩口にかけてマッサージをしましょう。先述したように、こっている筋肉を“伸ばした状態”で行うことが大切です。

肩甲骨の内側にある、「僧帽筋の中部」「背骨の両脇にある下部」が痛い場合も同様です。患部に手が届きづらい場合は、家族などに頼みましょう。これも内側から外側へ押し流します。

上腕部の「三角筋」まで同時にマッサージするとより効果的。このマッサージも、5回ほどでOKです。

医師の実体験から生まれたメソッド

実はこのメソッドは、私自身の経験から発見したものです。

数年前に、ひどい五十肩になってしまった私は、最初は薬を飲んだり、関節に注射をしたりといった、これまで自分が患者さんに行ってきたような治療法を試してみました。けれども、私には合わなかったのか、なかなか症状は改善しませんでした。

どうしたものかと思っていたときに出合ったのが、「筋膜リリース」という考え方です。

『肩・首・腰・頭 デスクワーカーの痛み全部とれる 医師が教える最強メソッド』(かんき出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

筋膜というのは、その名のとおり筋肉を覆っている膜のこと。この膜をリリースする。つまり、ほぐしてやると、筋肉が動きやすくなるというのが筋膜リリースです。これには、生理食塩水の注射を使います。この筋膜リリースを、肩関節周りの筋肉に対して行うと、五十肩が改善するというのです。

実際に注射を打ってもらうと、確かに効果はありました。痛みが和らぐのです。といっても、効き目はすぐに消えて痛みが戻ってきます。これを何度も繰り返して、徐々に肩を動かせるようにしていくわけです。

それならば、と思いついたのが、筋膜リリースのターゲットである筋肉を、自分でマッサージすることも有効ではないか、ということ。

さっそく、自分で押し流しのマッサージをやってみると、予想は的中でした。肩を動かしたときの痛みが瞬時に和らいできたのです。結局、このマッサージを続けることによって、私は五十肩を治すことができました。さらに、自分以外にも五十肩で悩む人々に試してもらって、効果を確認しています。

「押し流しマッサージ」はこりや痛みが出たときの対処法ですが、一緒に「肩甲骨はがし」などのストレッチを行い、肩甲骨を積極的に動かすことで肩こり・腰痛の予防ができます。ぜひ、毎日の習慣として取り入れてみてください。

遠藤 健司 東京医科大学整形外科准教授。日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医

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えんどう けんじ / Kenji Endou

東京医科大学整形外科大学院修了後、米ロックフェラー大学、東京医科大学整形外科医長等を経て2018年より現職。
自身が肩こりに苦しんだ経験から、本書で紹介するメソッド「肩甲骨はがし」ストレッチ、「押し流し」マッサージなどを開発。この方法を肩こりなどに苦しむ多くの人に伝えるため、研究、診療の合間を縫って、書籍やメディアなどで情報発信を行っている。
著書に『肩・首・腰・頭 デスクワーカーの痛み全部とれる 医師が教える最強メソッド』(かんき出版)などがある。日本テレビ「世界一受けたい授業」、TBS「この差って何ですか?」などメディア出演多数。

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