親に「暴言を吐くわが子」への見方を変えた一言 「困った子」ではなく「困っている子」
最後のルールが「ありがとうと言う」。カーテンを閉めてくれただけでも、「やってくれてありがとう」ときちんと伝える。
感謝の言葉は、言われた側が自分の存在意義を確認できると思ったんです。「誰かの役に立っている」と思うことで、自分の存在に意味がある、と感じられるかもしれません。
3つのルールを軸に、これまでは「家族だから別にいいじゃん」と気にしてこなかった息子への言葉づかいの一つひとつを、変えていきました。
──すごく大事なことですが、親子だからこそ言葉づかいは変えづらいですよね。
私にとって息子は、産まれたときからかわいくてしょうがない存在です。つらい思いをしている大事なわが子をどうにかして救いたい。
そう思ったとき、変わる必要があるのは息子ではなく私だと強く思いました。私が変わらなければ息子は救えないし、逆に追い詰めてしまうと。
ですから、「命令しない」「否定しない」「ありがとうと言う」は私を変えるための修行でした。
3つのルールを中心に態度や言葉に気をつけていくと、息子はだんだんと明るくなっていきました。
息子に伝えたい「ありがとう」
──今は高校を卒業して専門学校に通う息子さんを見て、どう感じられていますか?
「生きていてくれてありがとう」と言いたいです。不登校だったころ、「なんのために生きているのかわからない」「生きていても意味がない」と息子はよく泣いていました。
これを見ていたので、私はいつも不安でした。買い物から帰って玄関の前に立つと「このドアの向こうで息子が死んじゃっていたらどうしよう」と想像して怖かったです。
鍵穴に鍵を差す手が震えたときもありました。そのくらいずっと気が抜けない日々でした。
不安との戦いのなかで、私は自分の気持ちを支えるためにノートをつけていました。新聞や本、音楽の歌詞などから見つけた「大事にしたい言葉」をメモしたノートです。
私のこのノートに「言葉の宝物」と名前を付けていました。そのなからひとつ、紹介したい言葉があります。
「啐啄同時(そったくどうじ)」という四字熟語です。鳥のヒナが孵化する直前に卵のなかから鳴き、親鳥はそれに応えるように外から殻をつついて割る、ということを表す言葉です。
私は、ヒナと親鳥の姿を息子と自分に重ねていました。外に出る準備が整っていないうちに「早く出ろ」と突いたら、卵のなかでヒナが死んでしまうかもしれない。
でも、「そろそろ」と合図があったらコツコツと親が殻を割ってサポートしてあげればいい。「何事にも時がある」と思うんです。
息子が外へ出る「時」は親ではなく息子が決めるものなんですよね。息子は無事に卵から出てきてくれました。振り返ってみると、さまざまなことに気づかせてくれた息子に、本当に感謝しています。
──ありがとうございました。
(聞き手・茂手木涼岳、編集・本間友美)
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