親に「暴言を吐くわが子」への見方を変えた一言 「困った子」ではなく「困っている子」

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──その後、お母さんの気持ちに変化があったんですよね。

どんなに私が「行かせる努力」を続けても、息子は学校へ行きません。「これじゃあ何も解決しないんだな」と思い始めました。

とはいえ、どうしたらいいかわかりませんでした。相談できる人もいなくて、悶々としていました。

その一方で息子との毎朝のバトルは日々、激化していきました。私は息子のことを全然わかろうとせず、息子の気持ちを、息子自身の言葉で説明することを求めていました。

「なんで学校へ行けないの」「言わなきゃわからないでしょ」と。

一方、息子は、母親はなんでもわかってくれる存在だと思いたかったようです。「ママなんだからわかるでしょ!」と言い返されました。あるときは、「言葉にできない!」と大泣きされたこともあります。

私は息子が何を考えているかわからないし、息子もどう伝えたらいいのかわからない。当時の息子から出てくるのは暴言ばかりで、私はサンドバック状態でした。

こんな毎日ですから、「この先どうなっちゃうんだろう」と本当に不安でした。でもあるとき、「過去、不登校だったけど今は素敵な人生を送っている人がいるかもしれない」と思い、ネットで「不登校有名人」と検索してみたんです。

その際に出会ったのが『不登校新聞』でした。とくに『不登校新聞』の読者どうしで交流できる「メーリングリスト」(下記参照)の存在が心の支えになりました。

まわりに不登校経験者がおらず、誰にも相談できなかった私は、メーリングリストで悩みを打ち明けてみたのです。「息子の暴言がつらいです」と。

すると、先輩お母さんから、「この人だったらわかってくれると思うから、すべてをぶつけてくるんだよ」と言われました。その答えは私にとって衝撃でした。

「そうか、息子は愛情を求めているんだ」。そうわかったとき、息子のことを「なんて愛おしいんだろう」と思い直すことができました。

3つのルールは

──ご自身の気持ちが変わると息子さんへの接し方も変わりましたか。

そうですね。「不登校の子どもは『困った子』ではなく、『困っている子』だ」という一節を本で読んだことがあります。これを読んでからは、息子に対しての態度を「変えなきゃいけない」と強く思いました。

編み出した3つのルール(イラスト:不登校新聞)

そして、私なりに、3つのルールを決めました。「命令しない」「否定しない」「ありがとうと言う」です。困っているわが子が、どうしたら気をラクにできるかと考えて編み出したルールでした。

「命令しない」は、食事のとき、「ご飯食べなさい」と言うのではなく「ご飯できたよ」と言う。お風呂も「入りなさい」ではなく「お風呂が沸いたよ」と言います。息子が食べるか食べないか、お風呂に入るか入らないか、選択できるような言葉にしたんですね。

次に「否定しない」。息子がオンラインゲームをやっていると、「いつまでやっているの。もうやめなさい」と言いたくなってしまいます。

でも、楽しくゲームをしているなら「誰とやっていたの?」「どんなゲーム?」と聞くようにしてみました。すると、いろいろと息子が教えてくれて、私に対して心を開いてくれるようになったんです。

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