富山のテレビ局が問う「地方発調査報道」の重み 映画「はりぼて」に見えた葛藤、しがらみ、忖度

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『はりぼて』の1シーン。中央の柱には「正々報道」の文字が踊る赤い大きなポスターが貼られている ©チューリップテレビ

日本民間放送連盟がHP上で公表しているデータ(2017年7月末現在)によると、テレビ放送を担う放送局は127社を数える。総従業員数は2万2568人で、1社当たりでは約178人。働く人の数だけで比較すれば、チューリップテレビは日本最少クラスだ。そんなローカル局が手掛ける調査報道には、どんな意味と役割があるのか。それを当事者たちはどう感じていたのだろう。まず、砂沢氏。

砂沢氏「地方ローカルメディアの有利な点は、狭く深く取材できるということだと思うんですね。身近な問題はとくにそうです。そうした題材が他地域で起こっている出来事と重なりがあり、構図も似ていれば、中央メディアや他地域のメディアもそれぞれにその問題を取り上げ、全国的なテーマになるでしょう。だから、自分の地元で足元で深く取材する。それが大切なんだと思います」

五百旗頭氏は一連の報道が終わった後、隣県・石川県の地方局に移った。新しい職場でもドキュメンタリー番組の制作に携わっている。

地方には普遍的なテーマが豊富にある

五百旗頭氏「ドキュメンタリーや特集番組について言うと、地方局はこれまで、まずローカルで放送し、それを東京でも放送してもらえれば万々歳という意識でした。でも、今は違う。地方からアジアや世界に直接配信できる環境があるし、配信していかなければいけないんですよ。地方局が制作する番組は、東京ばかり向いてきたから広がらなかった。中央の東京になんとか取り上げてもらおう、みたいな発想でいると、作るものもおもしろくなりません。
実際、東京で作られた番組を見ると、構成は単純ですし、わかりやすさ重視で視聴者に考えてもらう作りになっていない。とくにテレビの世界では、東京が作ることがすべてだという、誰が決めたのかもわからないセオリーみたいなものがあって……。逆に地方局のほうが表現の幅は広いでしょう。それに、地方には普遍的なテーマが豊富にある。『はりぼて』のようなテーマもある。
実際、世の中の出来事は複雑で曖昧じゃないですか? 報道やドキュメンタリーは本来、そこをやるべきなんです。地方局にしかできないからこそ、ローカルから海外に目を向け、普遍的なテーマをきっちりと届けることに挑戦したいと考えています」

 

取材:高田昌幸=フロントラインプレス(Frontline Press)

Frontline Press

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「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループ(代表=高田昌幸・東京都市大学メディア情報学部教授)。2019年5月に合同会社を設立して正式に発足。調査報道や手触り感のあるルポを軸に、新しいかたちでニュースを世に送り出す。取材記者や研究者ら約40人が参加。スマートニュース社の子会社「スローニュース」による調査報道支援プログラムの第1号に選定(2019年)、東洋経済「オンラインアワード2020」の「ソーシャルインパクト賞」を受賞(2020年)。公式HP https://frontlinepress.jp

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