富山のテレビ局が問う「地方発調査報道」の重み

映画「はりぼて」に見えた葛藤、しがらみ、忖度

取材中の記者たち。映画『はりぼて』の1シーン ©チューリップテレビ

北陸地方の富山市議会が大混乱に陥ったのは、2016年夏から2017年にかけてのことだ。政務活動費を不正に使っていたなどとして市議14人が五月雨的に辞職し、市議会は大混乱に陥った。あれから5年目。この問題を調査報道でスクープし、一連の報道をリードしていた地元の放送局チューリップテレビがドキュメンタリー映画『はりぼて』を制作し、公開が始まった。8月よりユーロスペースほか全国で順次ロードショーされている。

議会の混乱ぶりをシリアスかつコミカルに描き、公金使徒のずさんさ、地方議会と住民の関係、民主主義の在り方なども問うているが、まったく別の姿も見えてくる。取材とは何か、調査報道とは何か、取材者の障壁はどこにあるのか。さらには地方メディアの存在価値や組織メディアの可能性と限界も見えてくる。これらを監督2人はどう考えているのか。話を聞いた。

監督は40歳の記者と42歳のキャスター

『はりぼて』の監督は、富山市政の担当記者だった砂沢智史氏(40歳)、記者でキャスターだった五百旗頭幸男氏(42歳)の2人である。

映画は、富山市議の様子を“客観的”に映すというよりも、徹底した取材者目線で描かれている。もとより“純粋な客観的目線”など存在しないが、取材記者にカメラが密着したおかげで取材シーンや取材手法がよくわかる。調査報道の取材プロセスは、意外に単純で簡単だということも見える。

当時の取材は、議員報酬の引き上げ提案に疑問を持って取材を始め、さらに政務活動費の実態を調べるために情報公開請求で公文書を入手するところから本格化していく。ところが、現場記者だった砂沢氏にとって、公文書を1枚ずつめくっていく作業は初めてだった。砂沢氏は言う。

次ページ調査報道は難しくないが、「しつこさ」が欠かせない
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