富山のテレビ局が問う「地方発調査報道」の重み 映画「はりぼて」に見えた葛藤、しがらみ、忖度

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砂沢智史氏。取材はオンライン(撮影:高田昌幸)
砂沢氏「以前に使ったのは一度だけ。そんな制度があるんだなといった程度の認識です。ところが、富山市議の関係で請求した文書は、実は1万5000枚もあったんです。コピー代が1枚10円、全体で15万円です。調査報道を徹底的にやるぞ、みたいなものを最初から意識していたわけではなくて、膨大な資料の山を前に、この素材をどうオンエアに結びつけたらいいのか、と。これだけの経費を使ってましたからね。
上司のデスクと2人、オンエアできる価値があるのかどうかもわからないまま、(政務活動費の使途などを記載した公文書を)1枚ずつ調べ始めたわけです。調査報道? そんなもの、まったく頭にありません。これが調査報道なのかと意識したのは、一連の報道が終わってからです」

もっとも、砂沢氏は「調査報道自体は特別な取材ではない。疑問に思ったことを、しつこく、諦めずに取材し続けることであり、ごく普通の取材でもある」という点に気づいていく。問題は「取材の途中では先が見えない」ことだった。その心理的なプレッシャーは小さなものではなかったとも言う。

キャスターから見えた「記者の心理的な壁」

政務活動費問題が火を吹いたころ、キャスターだった五百旗頭氏は別番組を制作中だったため、現場取材にかかわる機会は少なかった。当時は同僚の頑張りを目にしながら、「記者の心理的な壁」について考えていたという。どういう意味だろうか。五百旗頭氏は、次のように語った。

オンライン取材で語る五百旗頭幸男氏(撮影:高田昌幸)
五百旗頭氏「調査報道に限らず、ほかも同じですが、どこまで取材するかの壁は、外部からの圧力ではなく、記者の心理的な障壁が大きいと思ってきました。取材の出発点は、普段から純粋に思っていることだったり、些細な疑問だったりですよね? そこからスタートし、いかに根気よくやっていけるか、です。
『こんな取材をやっていたら取材先や権力側が怒るんじゃないか』とか『社内の上層部が好ましく思わないんじゃないか』とか、そういうことを考える人は少なくないと思うのですが、それでは取材が進まなくなる」
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