社交的な人々は「ひきこもる力」をわかってない 大勢と集まったりしない人は何をしているのか

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一方、コミュニケーション力というのは、感覚に寄りかかった能力です。感覚が鋭敏な人は、他人と感覚を調和させることがうまい。大勢の人がいる中に入っていく場合、それは確かに第一番手に必要な能力かもしれません。

しかし、それは「意味」でしかない。

「意味」が集まって物語が生まれるわけですから、そういう経験も確かに役に立ちます。けれども、「この人が言っていることは奥が深いな」とか、「黙っているけれど存在感があるな」とか、そういう感じを与える人の中では、「意味」だけではなく「価値」の増殖が起こっているのです。それは、1人でじっと自分と対話したことから生まれているはずです。

「暗いこと」はコンプレックスにならない

価値を生み出すためには、絶対にひきこもらなくてはならないし、ひきこもる時間が多い人は、より多くの価値を増殖させていると言えます。

『ひきこもれ<新装版> 』(SB新書)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

でも、コミュニケーションということでいえば、ぜんぜん駄目だということになるのでしょうね。「あいつは鬱陶しくてしょうがない」と言われるでしょう。それでも、その人の内部では、豊かさが増えていっているわけです。ほかの人にはわかりにくいでしょうが、何かのときに、その豊かさが伝わるということがある。

「よくよく話してみたら、この人はいろいろなことを考えているんだな」と思ってくれる人も出てくるはずです。ひきこもりの傾向のある人は、暗いとか話が盛り上がらないとか、あいつと一緒にいても気心が知れなくて面白くないとか、そんなことを言われているかもしれません。

もし、それがコンプレックスになっている人がいたとしたら、それは決して悪いことではないのだということを覚えておいてください。

あなたは、明るくて社交的ではないかわりに、考えること、感じて自分で内密にふくらませることに関しては、人より余計にやっているのです。それは、毎日毎日、価値を生んでいるということなのです。

吉本 隆明 思想家、詩人、文芸批評家

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よしもと たかあき / Takaaki Yoshimoto

1924年生まれ。東京・月島生まれ。東京工業大学電気化学科卒業。工場に勤務しながら詩作や評論活動を続け、文学、社会、政治からテレビ、料理、ネコの世話まであらゆる事象を扱う「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。2003年、『夏目漱石を読む』で小林秀雄賞受賞。著書に『共同幻想論』『言語にとって美とはなにか』『ハイ・イメージ論』『カール・マルクス』『悪人正機』『ひきこもれ』『日本語のゆくえ』『吉本隆明が語る親鸞』『開店休業』『フランシス子へ』などがある。

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