社交的な人々は「ひきこもる力」をわかってない 大勢と集まったりしない人は何をしているのか

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ぼくは決してそうは思わない。世の中の職業の大部分は、ひきこもって仕事をするものや、一度はひきこもって技術や知識を身に付けないと一人前になれない種類のものです。学者や物書き、芸術家だけではなく、職人さんや工場で働く人、設計をする人もそうですし、事務作業をする人や他人にものを教える人だってそうでしょう。

ジャーナリズムに乗っかって大勢の前に出てくるような職業など、実はほとんどない。テレビのキャスターのような仕事のほうが例外なのです。いや、テレビのキャスターだって、皆が寝静まった頃に家で1人、早口言葉か何かを練習していたりするのではないでしょうか。それをやらずに職業として成り立っていくはずがない。

家に1人でこもって誰とも顔を合わせずに長い時間を過ごす。周りからは一見無駄に見えるでしょうが、「分断されない、ひとまとまりの時間」をもつことが、どんな職業にも必ず必要なのだとぼくは思います。

1人で過ごす時間が「価値」を生み出す

ぼくには子どもが2人いますが、子育てのときに気をつけていたのは、ほとんどひとつだけと言っていい。それは「子どもの時間を分断しないようにする」ということです。くだらない用事や何かを言いつけて子どもの時間をこま切れにすることだけはやるまいと思っていました。

勉強している間は邪魔してはいけない、というのではない。遊んでいても、ただボーッとしているのであっても、まとまった時間を子どもにもたせることは大事なのです。1人でこもって過ごす時間こそが「価値」を生むからです。

ぼくは子どもの頃、親に用事を言いつけられると、たいてい「おれ、知らないよ」と言って逃げていました。そうして表に遊びに行って、夕方まで帰らない。悪ガキでしたから、その手に限ると思っていました。

そうするとどうなるかというと、親はぼくの姉にその用事を言いつける。姉はいつも文句も言わずに従っていました。いま思っても、あれはよくなかったなあと反省します。つまり、女の子のほうが親は用事を言いつけやすい。姉本人もそういうものだと思って、あまり疑問をもたずに用足しに行ったりするわけです。

そういったことを当時のぼくはよくわかっていた。そして、うまく逃げながらも「自分が親になったら、これはちょっとやりたくないな」と思っていたのです。

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