仕事がつまらないと思う人は「見方」を知らない 自分を卑下しているとその通りになってしまう

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しかし最近では、科学者たちは自我消耗説に批判的な目を向けるようになり、中にはこの説を否定する科学者もいる。マイアミ大学のエバン・カーターは、バウマイスターの研究結果を最初に疑った1人だ。カーターは2010年に、自我消耗は実際に起きると報告した約200件の論文を検証し、自我消耗説を裏づける確かな証拠はない、と結論づけた。

さらに、砂糖が意志力を高めるというような、自我消耗説の不可思議な主張のいくつかは、まったくのデタラメだったことが判明した。では、自我消耗と呼ばれた現象は、どう説明すればいいのだろうか。初期に行われた研究の結果は信用できるものだったかもしれないが、研究者たちは間違った結論に飛びついてしまったらしい。

スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドウェックは、総合科学誌『米国科学アカデミー紀要』に掲載された共同研究において、自我消耗の兆候が認められたのは、意志力には限りがあると信じている被験者だけだった、と結論づけている。被験者の力を回復させたのは、レモネードの中の砂糖ではなく、砂糖の効果を信じる気持ちだったのだ。意志力には限界があると考えない人々には、自我消耗の兆候は見られなかった。

今でも多くの人が自我消耗という考えを支持しているのは、それを否定する証拠があることを知らないからだろう。だが、ドウェックの結論が正しければ、自我消耗説がまかり通っているのは由々しきことだ。というのも、人は実際にはまだ余力があるのに、自我消耗を言い訳にして何かを諦めてしまうかもしれないからだ。

トロント大学の心理学教授でトロント社会神経科学研究所の責任者であるマイケル・インズリクトは、別の考え方を提案する。それは、意志力を限りある資源ではなく、感情のようなものと見なす考え方だ。喜びや怒りを「使い果たす」ことがないのと同様に、意志力は、私たちに起きること、私たちが感じることに応じて、弱まったりあふれ出たりする、と彼は言う。

挫折したとき、自分をいたわれる人になる

最近行われたいくつかの研究から、意志力の捉え方と、最後までやり通す能力との間に、強い結びつきがあることがわかった。

ジャーナル・オブ・スタディーズ・オン・アルコール・アンド・ドラッグスに掲載された研究では、アルコール依存症の患者で、自分には渇望と戦う力がないと考える人は、そうでない人より、禁酒を試みても再び飲酒する可能性がはるかに高いことが示された。依存症患者の意志力の低さについての自覚の程度は、治療後に逆戻りするかどうかを判断するうえで、身体的な依存の程度と同じくらい重要である。

つまり、心の持ちようは、身体的依存と同じくらい重要なのだ。自分に向かって何を言うかが、治療の成否を分ける。自制心が弱いというレッテルを自分に貼ると、実際に自制心が弱くなる。したがって、挫折したときには、自分はダメな人間だと自己批判するのではなく、自分に思いやりをもって、優しく語りかけたほうがいい。

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