仕事がつまらないと思う人は「見方」を知らない 自分を卑下しているとその通りになってしまう

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次に、「仮想の遊び場」を設けた。そこでは制約が仕事の楽しさを生み出した。その土地の気象条件や、どのような準備が可能、あるいは不可能か、といった作業上の制約を彼は学んだ。制約の存在は、想像力を発揮して作業を楽しむために欠かせない、とボゴストは言う。芝刈り機の最適な刈り取り経路を見つけたり、スピードの向上を目指したりするのも、仮想の遊び場で遊ぶ方法の1つだ。

楽しさとは、何かの中に、ほかの人は気づいていない「可変性」を探すことであり、退屈と単調さを打ち破って、隠れた美を発見することである。

歴史上の偉大な思想家や発明家がさまざまな「発見」を成し遂げられたのは、発見の魅力に取りつかれていたからだ。誰にも、もっと知りたいという欲求があり、それによって謎解きや発見に引き寄せられる。

しかし、忘れてはならないのは、仕事に可変性を発見できるのは、時間をかけて仕事に集中し、懸命に謎を探した場合に限られることだ。それは、仕事を前回よりうまく、あるいは速くできるかどうかという自分の能力についてかもしれないし、来る日も来る日も未知のものに挑戦し続けることかもしれない。そのような仕事に内在する謎(ミステリー)の探求は、ほかのことに逃避したくなる困難な仕事を、私たちを夢中にさせる遊びに変えてくれる。

自分の性格についての見方を変える

私たちを注意散漫へと導く不快な感情をうまく扱うには、仕事への見方を変えるとともに、自分についての見方も変えなければならない。「性格」は「人あるいは動物の性質、とくに、行動に恒久的な影響を与えるもの」と定義され、自分の性格をどう捉えているかは、その人の行動に大きく影響する。

意志の力には限りがあるのでセルフコントロールには限界がある、という心理学説が一般に広く信じられている。これによると、私たちが全力を尽くそうとすると、ともすれば意志力を使い果たすことになる。心理学者はこの現象を「自我消耗」と表現する。だが、自我消耗は本当に起きるのだろうか。

2011年に、心理学者のロイ・バウマイスターがニューヨークタイムズ紙のジャーナリスト、ジョン・ティアニーと書いた本Willpower:Rediscovering the Greatest Human Strength(邦訳『WILLPOWER 意志力の科学』インターシフト)は、ベストセラーになった。同書は、自我消耗説を裏づけるバウマイスターの研究をいくつか紹介している。その1つで、注目に値するのは、ただ砂糖を摂取するだけで意志力が回復するという、摩訶不思議な実験だ。その実験では、被験者は砂糖を加えたレモネードを飲んだだけで、困難な仕事をこなすための自制心とスタミナを回復したそうだ。

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