財政再建は時期尚早、まずは景気回復を--リチャード・カッツ
日本の財政赤字が急増したことにより、またしても、日本国債の危機に警鐘を鳴らす声がかまびすしくなってきた。彼らは、2010年度には新規国債発行が税収を上回るだろうとする予測や、債務の総残高がGDP比で200%に達したことについて、不安を表明している。実際に、藤井裕久前財務大臣は、財政の引き締めを主張する中で、債券市場の混乱への懸念を表明した。パニックを引き起こしかねないこのような動きもあって、昨年10月には、10年物国債の利回りが一時的に上昇した。
確かに、政府は際限なく国債を発行できるというわけではない。しかし、日本が危機に瀕していると考える理由はない。"危機"の到来を信じる投資家は、カネを失う可能性がある。景気低迷から抜け出せないうちに(一部のエコノミストは、10年には1四半期または2四半期にわたりマイナス成長が続くと懸念している)政府が財政出動を縮小すれば、二番底に陥る危険もある。景気低迷期の緊縮財政は、景気をさらに悪化させるばかりではなく、赤字をさらに深刻化させることになる。
今のところ、日本政府が国債の利払いに窮しているという兆候はない。逆に、10年の純利払い費はGDPのわずか1.3%と予測され、20年前の1.1%とほとんど変わらない(図1参照)。また、OECD諸国において過去20年間を通して一般的に見られた平均は率は2.6%だったが、この1.3%という率はその半分でしかない。
日本銀行は今でも長期金利を低く抑える力を維持しているので、債務返済の負担は非常に軽い。過去10年間のうちのほぼ全期間を通して、10年物国債の利回りは1.2%から1.8%の間で推移した(図2参照)。今年の1月半ばには、最低値に近い1.3%だった。