「指導者が『勝ち負けを度外視してみんな楽しくやろうよ』と采配しても、選手たちは自分たちで判断して『あいつ、ストライクは入らないから替えようよ』と言ってくる。そういうものです。
それがスポーツを逸脱しないように、健康被害やいじめなどに発展しないように気配りするのが大人の役割でしょう。大人が見ていながら、小学生でひじを壊して投げられなくなるのは本当に信じられないですね。
その背景には、指導者が勝たないと評価されないという風潮があります。指導者も人間ですから、評価を欲しがります。少年野球が『勝つ、優勝する』という価値観しかないのが問題だと思います。
それと僕は、学童野球でも月謝はしっかりとるべきだと思います。その代わり、お茶当番のような父母の負担はいらないでしょう」
自粛期間を経て投手の球速が上がったのか
新型コロナ禍で高校野球も大学野球も壊滅的な影響を受けた。
「自粛期間中、選手は練習できないまま、もやもやしていた。野球をやらせてあげたいなあと本当に思った。甲子園の中止をめぐってバタバタしたのも、仕方がないことでした。代替大会を開催しても、しなくても、日本高野連が批判を受けるのは仕方がない。批判を受け止めるのも仕事でしょう。
甲子園の交流戦は『お腹が空いているのでお茶漬けがおいしかった』というように、野球ができるありがたさを感じたんじゃないでしょうか。そういう意味ではベストの選択だったと思います。
一部の報道で、自粛期間を経て投手の球速が上がったというのがあった。本当なのかなと思いました。本当ならしっかりデータを取って論文にすべきだと思います。僕はもともと『休めば球速は上がる』と思っていた。ただその理由が知りたかった。
もともと時速140キロを投げる力があった子が、毎日の練習で疲れていたのが休んだことで回復したのか、それとも休んだことによって筋肉が成長したのか。休んだら回復するのは当たり前ですが、それ以上のことがあったのか、どうかですね。個人の感想レベルではなく、大学の研究者がしっかり調べてエビデンスを出してほしいと思います」
確かにこれまでの高校野球は、休むことなく練習をしていた。
「昭和の昔は週に7日練習していた。今は6日くらいですが、コロナ禍以降は“休み”が大事になってくるでしょう。僕は成長期には週に4日の練習でいいと思います。野球をしないときは体操部などに入ればいい。あるいは、個人練習に移行すればいいと思います。
高校生の場合、個人個人で考えて、自分ができることは何かを考えるのが大事です。ブラスバンドがそれぞれのパートの練習をして、最後に指揮者がそれを合わせる感覚でしょうか。指導者は、個人に次の練習のメニューを与えるという形が理想的でしょう。
ただし、個人練習になると『精度を上げる反復練習』はつまらないから、さぼる人が出てくる。だから、これは指導者のアドバイスや指導が必要でしょう」
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