住宅ローンの「35年返済」が実は得ではない理由 返済期間に注目すると最大数百万の差がつく

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さて、早めの繰り上げ返済をおすすめするとたいてい返ってくる返事に、「住宅ローン控除の期間10年(2019年10月1日~2020年12月31日までの間に入居した場合には13年間)は繰り上げ返済しないほうがいいと業者にアドバイスされた」というものがあります。

確かに、「年末の住宅ローン残高の1%」が還付(納めるべき税金から控除)されるという建前から言えば、繰り上げ返済をして住宅ローン残高が減ると還付金が減って損してしまうと思うかもしれません。ただ、実際にはケースバイケースです。いくつか紹介します。

高額なローンでも還付金に影響しない

まず1つ目は、高額な住宅ローンを組むケースです。都心では6000万円や7000万円もの高額な住宅ローンを組む人が少なくありませんが、こういうケースでは少々繰り上げ返済したところで、住宅ローン控除からの還付金にはまず影響が出ません。

というのは、住宅ローン控除の対象額には上限があり、新築・未使用であれば4000万円(一般物件)または5000万円(長期優良住宅、低炭素住宅)と定められているからです。毎年100万円程度の繰り上げ返済をしても、この上限額を割り込むほどの繰り上げ返済でなければ、住宅ローン控除額に影響を及ぼしません。

そして2つ目は、中古住宅を個人の売り主から購入するケースです。以前は2000万円が上限だった住宅ローン控除が、今現在の4000万円や5000万円といった大型に拡充されたのは、消費税率がアップすることになった2014年4月以降の新築・未使用物件に対してです。逆に言えば、消費税が非課税とされている中古住宅の個人間売買などは2014年3月までの措置、つまり2000万円を上限額としています。

そのため、たとえ4000万円などの大型の住宅ローンを組んでも、新築のように「年末の住宅ローン残高の1%」をまるまる対象にはできないため、どんどん繰り上げ返済して利息負担を減らすほうが合理的と言えます。

次ページ年末の住宅ローン残高の1%より少ない額の還付も
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