滑り止めの会社に就職する「ある学生の葛藤」 「好きな事を仕事にしろ」は理想論でしかない

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少なくとも、市場性や将来性のある製品やサービス業界に身を置くほうが、自分の趣味に合致はするが市場性も将来性もない会社に身を置くよりも、一職業人の将来性を考えたうえではいいとも考えられます。

よく「好きを仕事に」とか理想論を言う人がいますが、好きな対象に市場性も将来性もなければ職業人としての成長はおろか、給料も上がらないことが容易に想像できます。

それでも自分は趣味の世界で生きたい、という強い信念があればもちろんそういった決断も当然ありだと思います。

しかしながら、頂戴した相談内容からは、よしださんとして、確固たるこの分野、という分野や対象があるわけではないように見受けられます。もっと言うと、そもそもの迷いの原因は製品に対する理解というよりも、第1志望ではなくよしださんの言う“滑り止め”と想定していた会社からしか内々定が出なかったことに対する葛藤や不安であるようにも思えます。

憧れていた会社、という表現を第1志望であった会社に使われていますし、内々定を頂戴した会社の扱っている製品とは関係のない会社のようでしたので、そのように想像したわけです。いずれにせよ自分が仕事に何を求めるか、を明確にしたうえで決断を下すとよいでしょう。

仕事を選ぶ際の基準は、それこそ会社の有名無名から規模や勤務地、給与水準、会社の雰囲気や扱っている製品やサービスなど、本当にいろいろとあり、人によってその優先順位は異なるものです。

「第1志望の会社」の何に憧れていたのか

もちろんすべてが自分の理想に合致する会社に出会えるなんてことはあまり想定しにくいですし、そもそも論としてその理想も自分の成長に応じて変わっていくものですから、何を優先するかや、何を重要視するかということについては万人に当てはまる正解はありません。

個々人が個々人の事情や考え方に応じて判断するべきことですから、まずは現時点においてよしださんが何を仕事に求めるかを明確にしたうえで就職先を判断なさるとよいのだと思います。

取り扱う製品に対する愛着がいちばん大切である、という話であればそういった製品を取り扱う会社にアプローチすればよいですし、この業界で働きたいという対象があるのであればその業界を中心に回るべきでしょう。

よしださんとして第1志望の会社が存在し、その対象を憧れ、と表現していますから、具体的に何に対して憧れていたのか、を考えることによってよしださんとして今現時点で仕事に何を求めているのかが見えてくるかもしれません。

なぜ憧れていたのか、そして同時にあまたある会社の中からなぜ内々定を頂戴した会社を滑り止めとして位置づけたのか? そういったご自身の行動の背景をキチンと棚卸することで、自分でも見えていなかった自分の考えや判断軸が見えてくるかもしれません。

冒頭において、就職とは自分を知るチャンスでもあり、新しい自分との出会いの場であると申し上げましたが、なんせ就職というイベントは学生であるよしださんにとっては初めての経験です。

初めてであるがゆえにいろいろと迷うのは当然ですし、迷うがゆえにキチンと就職ということや仕事に対する自分の考えを整理して理解し、自分自身の判断軸において就職先を選んでいただきたいのです。

就職とは新しい世界に踏み出す第一歩でもありますから、キチンとした考えのもと、仕事を選び、後悔しない生き方を目指していきましょう。よしださんがご自身の考えをキチンと理解したうえで、ご自身が理想とする会社と仕事に出会えることを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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