研究でわかってきたコロナ「期待持てる」新仮説 軽症でも、長期的な免疫が獲得できる可能性

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8月14日に学術誌の『セル(Cell)』に発表された論文など、ほかの複数の研究でも、症状が消えてから長い期間を経た人たちの血液から、コロナウイルスを攻撃するT細胞を分離することができた。研究室でそれらのT細胞をコロナウイルスで刺激すると、T細胞はウイルスと戦う信号を発し、クローンをつくって、戦いに立ち向かう新たな部隊を立ち上げた。

いくつかの報告書では、T細胞を分析すれば、抗体がほとんど検知できないレベルになった患者であっても、コロナウイルスに対する免疫反応がわずかに見られるのではないか、と指摘されている。

「非常に期待が持てる」と話すのは、カリフォルニア大学デービス校の免疫学者、スミタ・アイヤルだ。アイヤルもコロナウイルスに対する免疫反応をアカゲザルで研究しているが、今回取り上げている新しい研究には関わっていない。「ここから集団免疫についてある程度、楽観視できるようになる。さらにはワクチンの可能性も見えてくる」。

この新たな一連の研究によって、このパンデミックがいつ、どのように終わるのかに関して、恐怖感も和らげられる。8月14日にアメリカ疾病対策センター(CDC)が発表した最新のアドバイスが、いくつかのニュースで誤って解釈されて伝えられ、コロナウイルスの免疫はわずかな期間しか続かないだろうと報じられた。

専門家はすぐに反応し、そうした情報を広めることの危険性を指摘して、過去に感染したことがある人は、少なくとも3カ月の間は、少なくともある程度は再感染から守られ、その証拠は豊富にあると述べた。

ウイルスの変異も少ない

最近の研究とそれを裏付ける新しいデータを検討し、エモリー大学の免疫学者、アン-ヒョン・リーは、「人はこのウイルスに対する免疫を、しかも優れた免疫を獲得する。私たちはこの考え方を発信したい」と言う。リーは本稿で取り上げている研究には参加していない。

インフルエンザなど、繰り返し流行する病気もある。しかし、インフルエンザの場合は、ウイルスが変異する割合が大きいことがその要因の1つとなっている。そのために、免疫システムが病原を認識できなくなるのだ。これに対して、コロナウイルスは年ごとの変化はそれほど大きくない。

それでも、まだ解明されていない部分は多い。ミシガン大学の免疫学者、チョン-ヒ・チャンは、これらの研究によって、「防御性」があることは示唆されるが、実際に防御が働いていることは示されていないと言う。チャンも新たな研究には参加していない。「何が起こるのか、予測することは難しい。人間はとても多様だ。非常に多くの要因が関わってくる」。

(執筆:Katherine J. Wu、翻訳:東方雅美)
© 2020 The New York Times Company

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