「医療重視」は看板倒れ、民主党政権の医療政策、混迷する診療報酬改定
100万人が住む東京・城南地区(大田区、品川区)で、病院が次々と消えている。
同地区では、1997年に56あった病院数が2007年に42に減少。ベッド数も9005床から7812床へと激減していることが大田区入院医療協議会(黒田俊会長=蒲田医師会会長、黒田病院院長)の調べでわかった。
入院医療を維持できずに、無床診療所に転換したケースだけでなく、住宅用地に転用された病院や有床診療所も少なくない。売り先が見つからずに廃墟と化した病院もある。
住民への影響も深刻だ。大田区では、医師不足でお産ができる医療機関が7カ所に減少。09年1~11月には、区内の医療機関で出産できた割合は42%に減った。在宅医療に取り組む医師は、「療養病床の不足から、認知症高齢者の入院ベッドの確保は極めて困難だ」と指摘する。
黒田氏は、「大田区のような都市部では、入院ベッドの稼働率が90%を切ると経営が成り立たない。当院もほぼ満床だが、私財を投じて経営を維持している」と語る。
「医療崩壊」は、地方部でも深刻だ。北海道や東北などでは、医師不足で存続が危ぶまれている病院も少なくない。青森県では診療所の閉鎖による無医村も生まれている。全国の診療所数も08年には21年ぶりに減少に転じた。
プラス改定でも止まらぬ崩壊
「医療再生には、診療報酬のネット(全体)でのプラス改定が必要だと申し上げてきた。2010年は実に10年ぶりのプラス改定になる」
財務省との予算折衝を終えた昨年12月23日、長妻昭厚生労働相は記者会見で胸を張った。
しかし、プラス改定の内実はお寒い。増加幅が予想外の小幅(プラス0・19%)にとどまったことから、民主党政権による大幅な医療費拡大に期待していた医療界は落胆を深めている。