ベンチャー「逆風」でも投資集める猛者の潜在力 コロナ禍の中で勝ち・負け「選別」の時代に突入

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また先述のベインのほか、ゴールドマン・サックスやコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)といったアメリカの投資銀行やファンドなど、VCではない投資会社も国内ベンチャー投資の担い手になりつつある。「日本のレイターステージ(成熟期)ベンチャーへの投資はプレイヤーが少なく、新たな事業領域として狙っているようだ」(大手VCグローバル・ブレインの百合本安彦CEO)。

さらに、テック企業を巡り過熱する米中摩擦を背景に、これまで中国やインドを中心にアジア投資を展開してきたアメリカのVCも日本に視線を向け始めている。世界大手のセコイア・キャピタルも日本での投資を検討中で、複数のVC関係者によれば、クラウド経由でソフトウェアを提供する「SaaS(Software as a Service)」を念頭に置いているという。

最注目株は「SaaS」ベンチャー

個々のベンチャーに目を向けてみると、観光や外食など、集客を基本とする領域の各社は打撃を受けた一方、テレワークやECなど事業をデジタル化する分野はコロナ禍で一気に注目が集まった。やはり、SaaSは注目株の筆頭格だ。

リモート商談ツールのベルフェイスは今年2月に52億円を調達。テレワークが広がったことで、今年3~5月は3カ月連続で月間利用者数が過去最多を更新したという。建設業界向けのプロジェクト管理サービスを手掛けるアンドパッドは、7月に40億円を調達。業界特化型のサービスも台頭している。

「セールスフォース・ドットコム(顧客管理システム)やスラック・テクノロジーズ(ビジネスチャット)などのアメリカのSaaS企業が、日本は一大市場であることを示した。海外VCからの問い合わせは引きも切らない」。SaaSに特化したファンドを運営するBEENEXTの前田ヒロ・マネージングパートナーはそう話す。

今後の注目は「ディープテック」と呼ばれる、バイオや医療、農林水産、宇宙といった長期の研究開発を伴う領域。中でも大学発ベンチャーが活発だ。経済産業省の調査によれば、2019年度の大学発の企業数は2566社と5年で約5割増えた。大学発のVC設立が相次いだことが大きい。

ただ「大学の研究者だけで起業してもうまくいかない。経営や産業をわかる人が必要」と、ディープテック領域の投資に注力するVC、Beyond Next Venturesの伊藤毅CEOは指摘する。VC側が経営人材を紹介することも少なくないという。

投資環境は必ずしも活況とはいえないものの、ベンチャーのすそ野は着実に広がっている。

『週刊東洋経済』8月22日号(8月17日発売)の特集は「すごいベンチャー100 2020年最新版」です。
中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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