なぜNetflixはLGBTコンテンツに積極的なのか

あの人気韓国ドラマが潮目を変えるきっかけに

Netflixではタン・フランスが司会を務めるファッションバトルのリアリティショー『ネクスト・イン・ファッション』が2020年の新作の1つとして配信中。

また「クィア・アイ」番外編として「クィア・アイ in Japan!」もNetflixのラインナップにあり、全世界配信されています。この日本編ではインスタグラムのフォロワー数が940万人超えのお笑い芸人・渡辺直美や、女優の水原希子も登場し、若年層を意識したキャスティングであることがうかがえます。

イギリスのマーケティング会社Experience 12が34歳以下の若者3000人を対象に、ロックダウン中に行った調査結果でもNetflixからLGBTコンテンツが人気の1つに挙げられています。イギリスの34歳以下の若者から最も支持されるNetflixのその番組は、ドラァグクイーンを全米に広めた第一人者であるル・ポールが司会と審査員を務める『ル・ポール・ドラァグ・レース』でした。日本でも全12シーズンがNetflixで配信中です。

「カリスマ性と個性、度胸」のあるナンバーワンのドラァグクイーンを目指して、バトル戦に参加したドラァグがYouTubeでメイク動画を披露することも多々あり。TikTokでも人気のあるメイク動画に#ドラァグクイーンメイクが並び、ドラァグを若年層の間で一般化した影響力のある番組でもあるのです。

人気ラッパーのニッキー・ミナージュや、ぽちゃかわ系シンガーソングライターのメーガン・トレーナーらがゲスト審査員で出演し、新世代のドラァグファンも飽きさせません。

『梨泰院クラス』にトランスジェンダーの料理長が登場

Ampere Analysisのレポート結果では、LGBTコンテンツは圧倒的にアメリカ産であることも示されています。NetflixのLGBTコンテンツは65%がアメリカ発。ちなみにAmazonプライム・ビデオではその率は58%です。

さらに報告書によると、トルコ政府が同性愛者を主人公にしたドラマの撮影を拒否したため、Netflixのオリジナル作品が製作キャンセルとなってしまった事例もあったようで、国や文化の事情によっては、LGBTコンテンツの製作はリスクを伴うことから、アメリカ発に偏っているとみられています。

ただし、視聴者からは確実に支持されており、ワールドワイドでそのニーズは広がっていくことも予想されています。日本ではBLドラマ『おっさんずラブ』のヒットがあるように一般化されています。アジアではタイも同様です。

日本で大ヒットを記録する韓国ドラマ『梨泰院クラス』で登場するトランスジェンダーのマ・ヒョニ役を演じたイ・ジュヨン(写真:イ・ジュヨンのインスタグラムより)

一方、韓国では日本やタイと比べると保守的な傾向があるとされ、これまでドラマのキャラクターやテーマにLGBTが積極的に扱われていませんでした。そんななか、潮目を変えるきっかけに韓国ドラマ『梨泰院クラス』があったというのです。劇中では主人公パク・セロイが経営する居酒屋「タンバム」の料理長マ・ヒョニ(イ・ジュヨン)がトランスジェンダーであることを丁寧に描いています。

「(居酒屋のお客に)知られたら嫌がられるかも。クビにしたほうがいい」といった台詞もあり、韓国社会では偏見もあることを描写しています。生きづらさを抱えるそんなマ・ヒョニをさらにフォーカスし、自分らしい生き方を選択する終盤のある場面は『梨泰院クラス』の見どころの1つです。

Ampere Analysisの報告書では、2020年第1四半期に韓国放送局史上3番目に多く視聴されたドラマである『梨泰院クラス』が与えた影響力は高く、その後、韓国のNetflixにハン・ギチャンとチャン・ウィス主演のBLドラマ『君の視線が止まる先に』が追加されたと、説明しています。

韓国に限らず、ここにきてスペインやメキシコでもLGBTコンテンツに注目が集まっています。Netflixをはじめとする勢いのあるネット動画配信サービスで今後、各国現地製作のLGBTジャンルの新作が増えていくでしょう。多様な視点で作られることによって、さらに多様性も増していくのだと思います。

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