日本国債がそれでも持ちこたえているカラクリ 「ワニの口」が開きっぱなしで本当に大丈夫か
いずれにしても、政府は現在の巨額債務への対応を先送りし、デジタル化や災害対策を優先すると「骨太の方針」で示した。日本の財政はかつて、S&Pが指摘した「前人未到」の領域から次なるステージに入ったと言ってよいだろう。
実際に、西村経済再生担当大臣は「いまは財政を気にしていたら、国民の生命、雇用を守れない」と発言しているように、財政破綻の心配をしている場合ではない。ただ、2020年度末の国債発行残高は初めて1000兆円を上回り、プライマリーバランスの赤字額も2020年度の当初予定額の9.2兆円から66.1兆円に膨らむ予定だ。
こうした現状の中で日本の財政破綻は起きないのか。その懸念に対して、最も信頼できる根拠が「海外保有比率」と言ってよいだろう。2019年度末の段階で、外貨準備を除いた民間の海外保有比率は9%で、まだ11%の余裕があると言われる。
これは、「許容できない債務」と題する世界銀行のエコノミストが発表したリポートで指摘されており、政府債務がGDPの2.4倍にも達する日本の財政状況にはまだ余裕があると公表したのだ。
日本国債の海外保有比率は、国債だけであればまだ7.7%程度だが、国庫短期証券も合わせれば12.9%となっており、いまや日本国内の銀行を追い抜く勢いになっている。この3月末は145.8兆円だ。日本銀行「資金循環統計」によると、日本国債の発行高は1032.6兆円となり、保有者別内訳は次のようになっている(2020年3月末速報値)。
●生損保等……21.1%(218.1兆円)
●銀行等……14.4%(148.4兆円)
●海外……7.7%(79.1兆円)
一方、日本政府が発行している「国庫短期証券(T-Bill)」は98.2兆円の発行高のうち、海外投資家の比率は67.9%(66.6兆円)にも達する。国債と国庫短期証券を合わせた海外保有比率は12.9%(145.8兆円)。国債のみの海外保有比率は、イギリスの12%、スイスの11%と比べればまだ低いかもしれないが、油断はできないレベルであると言ってよい。
リポートでは、海外保有比率が20%に達するまでにはあと11%の余裕がある。11%というと約110兆円程度。日本銀行がいつまで国債を買い続けることができるのかわからないが、現在の海外投資家の保有額は79兆円程度。国庫短期証券を含めても145兆円であることを考えると、海外投資家が今後さらに110兆円を上積みするには、まだもう少し時間がかかりそうだ。
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