日本国債がそれでも持ちこたえているカラクリ 「ワニの口」が開きっぱなしで本当に大丈夫か

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そのほかにもトルコ(B+、S&P)、南アフリカ(BB-、同)といった国も、すでに「投機的格付け」の状態だ。これらの国のデフォルトは日本に直接的な影響はほとんどないと思われるが、スペインなどの銀行が影響を受け、金融機関の経営破綻が連鎖したときには、めぐりめぐって日本のメガバンクなどに跳ね返ってくるかもしれない。

それでも、日本国債の場合、マイナス金利政策、日本銀行による国債やETF(上場投資信託)買い付けといった金融政策が続く限りは、少なくとも円の急落によるハイパーインフレといった心配はないのかもしれない。海外のヘッジファンドなど、リスクを取って仕掛けてくるリスクマネーが動いたとしても、日本国内の銀行や公的資金、民間金融機関などが揃って買い方に回るはずで、日本国債が売り込まれて金利が上昇といった可能性は少なそうだ。

問題はコロナの収束時、アベノミクスの出口戦略

では、このまま日本政府は未来永劫、財政再建に取り組まなくていいのだろうか。世間で盛んに言われている「次世代に大きな負担を残す」心配はないのだろうか。アベノミクス時代に生きたわれわれはよいかもしれないが、その子供や孫も、いまのように日本銀行に国債を買ってもらい、充実した行政サービスや景気対策の恩恵を受けられるのだろうか。

「貨幣の量を増やせば物価が上がる」という経済学者のミルトン・フリードマンが提唱した考え方は、いまのところ説得力がなくなってきている。アベノミクスは、この考え方に基づいて、異次元の量的緩和に踏み切り、バズーカ砲と呼ばれる金融政策を展開してきた。

市中に流通させるマネーの量を増やしても、インフレにならないのであれば、アベノミクスは根底から誤っていたことになる。そういう意味では、アベノミクスもそろそろ次のレベルに移行する段階に入っている。

日本の財政問題は、どことなく日本の原発行政に似ている。「原発は危ない」という言葉は、いつしかオオカミがやってくると騒ぎ続けてきたオオカミ少年のように扱われていたものの、東日本大震災では、あわや東日本が全滅するリスクまで見え隠れした。

日本国債の発行残高を意味もなく、大義名分もなく、増やし続けていいという説明は不可能だろう。金融機関同士の資金ショートも当面は考えにくいから、金融危機が起こる可能性も低い。新型コロナウイルスが収束に向かったとき、そして安倍政権が終わったときに、どんな形でこの膨れ上がった財政を健全化させるのか。真剣に考え始める時期に来ている。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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