日本国債がそれでも持ちこたえているカラクリ 「ワニの口」が開きっぱなしで本当に大丈夫か

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こうした現実を踏まえて、内閣府は財政の均衡を目指す「基礎的財政収支(プライマリーバランス、以下PB)」の黒字化が、当初予定していた2025年度から2029年度にずれ込む見込みを発表している。

7月31日に「経済財政諮問会議」に提出した「中長期の経済財政に関する試算」を詳しく見てみよう。相変わらず「2025年度のPB黒字化と債務残高の対GDP比の安定的な引き下げを目指す」としながらも、2021年度の実質GDP成長率がV字回復(予想は2020年=-4.5%、2021年=+3.4%)したとしても、PBの黒字化は2029年度になるという理屈が示されている。

「日本の財政破綻はありえない」と言い切れない?

さて、そんな状況の中で、格付け会社のS&Pとフィッチが相次いで、日本国債の「見通し」を引き下げたわけだが、もともと日本の財政状況は極めて特殊な状況が続いており、政府の歳出と税収差を「ワニの口」と呼んで、ワニの口が広がれば広がるほど財政危機にある、と言われてきた。

2020年度の「ワニの口」はとうとう100兆円を超えており、前代未聞の状況だ。日本の政府債務はGDPの2.4倍にまで達している。この水準は日本が太平洋戦争で敗戦が決まったときの水準よりも高く、近代史上最も政府債務がひどかったイギリスの太平洋戦争直後をも超えようとしている。

かつて、格付け会社のS&Pは、日本の財政の状況を「前人未到の領域に入った」と表現したことがあるが、その時点の日本の普通国債残高はおそらく500兆円程度だったように記憶している。

筆者も、まだ400兆円台の普通国債残高のときに、雑誌のインタビューで財務省に「破綻はしないのか」というテーマで取材したことがある。1980年代のバブルが崩壊して、日本経済が逼迫していく中で、数多くのエコノミストや投資家が、このままではいずれ日本の財政状況は悪化し、当時まだ記憶に新しかった南米のアルゼンチンやブラジルの財政破綻からハイパーインフレに至るまでのプロセスを思い描いた。

確かに、教科書どおりにいけば、現在日本政府がやっている「財政ファイナンス」とも「マネタイゼーション」とも言われるような政策を続けていけば、日本の財政はいずれ破綻しても不思議ではないと思われていた。通貨を発行する中央銀行が、日本の国債を直接買い上げる政策は法律で禁止されているように、国家破綻への最短コースと言ってもいい。

さらに、日本銀行がバランスシートを大きくしていけば、いずれは日本銀行の信用が失われ、日本銀行が発行している「円」は暴落。日本国内の輸入物価が暴騰して、悪性インフレになるのではないか、という懸念があった。日本国債がどんどん発行されれば、需要と供給のバランスが崩れて、金利が上昇するのではないかと思われていたからだ。

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