あのイタリアがコロナ感染者「激減」させた方法

かつての医療崩壊からはとうに脱却

しかし、ウイルスが広がって制御できない恐れが出る中で、イタリア政府はある時点で、経済よりも命を優先すると決めた。その時、コンテ首相は「イタリア国民の健康が第一であり、今後もそれは変わらない」と述べた。

イタリア政府は、ウイルスのまん延から脱却するための最も辛い部分は、厳しいロックダウンという形で、一度限りで終わったことを願っている。そして、たとえ制限はあっても、いま安全に通常の生活を再開できることも願っている。イタリア政府高官によると、経済を再開する唯一の方法は、現在であってもなお、ウイルスを抑え込むことだという。

完全に町を封鎖するという戦略は、「政府の過剰な警戒感が経済をまひさせている」との批判も招いた。しかし、アメリカやブラジルやメキシコのように、ウイルスがまだ猛威を振るっているうちに経済を再開させようとするよりも、そうした戦略のほうがずっと有効だとわかるかもしれない。

抵抗はあるものの…

無論、引き続き警戒を求めても、それに対する抵抗や嘲笑やいらだちが生じないわけではない。それは世界のどこでもそうであり、イタリアも例外ではない。

電車やバスではマスクの着用が義務付けられているが、着けていない人も、あごまで下げている人も多い。若者たちは外出し、若者たちに特有の行動をしている。それによって、ウイルスの影響を受けやすい世代が感染するリスクが高まっている。大人たちも、ビーチや誕生日のバーベキュー・パーティなどに集まり始めている。9月の学校再開に向けての明確な計画はまだない。

また、ナショナリストのマッテオ・サルビーニが主導する「反マスク」グループが、政治的な狙いもあって急拡大している。サルビーニは7月27日に、握手やハグの代わりに肘どうしを触れ合わせる挨拶をするのは「人類の終焉だ」と言い切った。

しかし、イタリアの医療の専門家は、重症患者がいないことは感染が減っていることを示すものだと言う。そして現在のところ、イタリアの不平分子はそれほど多いわけでも、力を持っているわけでもなく、イタリアが辛うじて手にした成功の軌跡を無にしてしまうほどの力はない。

コロナ危機が勃発した当初は、イタリアはヨーロッパの隣国から距離を置かれ、マスクや人工呼吸器がほとんど国境を越えて入ってくることはなかった。しかし、それが逆によかったのかもしれないとWHOのゲラは言う。

「当初あったのは競争で、協力ではなかった」とゲラは言う。「そして、イタリアは孤立していると誰もが認識していた。その結果、孤立しているからこそ実行しなければならなかったことが、結果的には他の国々の施策よりも効果的だった」。

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