マルハニチロ、低すぎた「食品提供者の責任感」 農薬混入事件で第三者検証委員会が指摘した中身

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今回の調査では昨年9~11月にかけて、アクリフーズのピザ製品につまようじなどの異物混入が5件発生していたことも判明した。事件との関連は不明だが、逮捕・起訴された元契約社員は入社以来一貫してピザの製造に携わってきた。しかし会社側はこの出来事について、従業員が故意にやった可能性は考えず、特に内部調査なども行わなかったという。

評価給制度に対する不満

アクリフーズでは2012年4月に契約社員の給与制度を年功序列型から評価給に変更しており、これに関しても委員会は問題点を指摘した。会社側は制度変更の理由について、「個人の能力、役割、貢献度に見合う賃金制度が望ましいと考えた」としているが、聞き取りの結果、委員会はアクリフーズの契約社員たちは「新人事制度の導入は賃金引き下げのためと理解した」と中間報告に記している。

新人事制度では家族手当や早出・遅出手当が廃止された。制度変更前の11年と比較して13年の年収が下がった契約社員は3分の2に上り、平均年収は317万円から304万円に低下している。また、評価を行う係長や班長が製造現場にいないことが多く、委員会では契約社員の間では努力しても評価されないという不満が強かったとしている。

信頼回復を誓ったマルハニチロの伊藤社長

今村委員長は会見で、「こうした従業員の思いが今回の事件にどの程度影響したか判断するのは難しい」と前置きした上で、「不満をきちん把握し、対応できる仕組みがあれば事件は防げたかもしれない」と話した。

1月末に発足した検証委員会はこれまでに契約社員含め関係者約80人への聞き取り調査を実施。今回の中間報告では、農薬の毒性を過小評価したことや、簡単に異物を持ち込めてしまう工場管理の不備なども指摘している。5月末に予定する最終報告では再発防止策などの具体的な提言を行う。

これに先立ち、マルハニチロでは工場の監視カメラ増設など、すでに対策を講じている部分もある。会見で伊藤社長は、「安全で安心な食品を届けるのが私たちの使命。一丸となって信頼回復に努める」と力を込めた。食品企業の根本理念に立ち返り、消費者本位の企業に変われるのか。新生マルハニチロの本気度が試されている。

(撮影:今井康一)

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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