マルハニチロに問われる意識転換 冷凍食品の農薬混入事件が突き付けたもの

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1月30日に都内で開かれたマルハニチロホールディングスの臨時株主総会

 「食品は安全が第一。今回のことはとても残念」――。数年前からマルハニチロホールディングス(HD)の株主だという80歳の女性は、会場前で肩を落とした。

4月に予定するグループ内合併に向けて、1月30日都内で臨時株主総会が開かれた。合併で同社とアクリフーズを含む5社が一つの会社になり、新たにマルハニチロ株式会社が発足する。昨年12月に発覚したアクリでの農薬混入事件を受けて、総会に出席した株主からはマルハニチロHDの管理体制を問う声が相次いだ。

”身内”は疑わなかった

1月25日に逮捕されたアクリ社群馬工場の契約社員は当初、容疑を否認。しかし、数日後には事件の関与を認める供述を始めている。総会の冒頭、マルハニチロHDの久代敏男社長は、「悪質な行為に及ぶ人物の存在を許したのは痛恨の極み」と頭を下げた。

アクリでは640万パックの自主回収を実施

ある株主が、内部犯行を疑う意識が欠けていたのではないかと指摘すると、品質保証担当の村田彰德常務は、「従業員を悪人ととらえていなかった」と答えた。

危機管理体制改善に向け、1月31日に第3者検証委員会が発足する。委員長を務める奈良県立医科大学の今村知明教授は、「日本全体に言えることだが、(会社には)”悪い人”がいるという発想が乏しい」と警鐘を鳴らす。

今回の事件は、消費者から苦情として寄せられた異臭の原因を、工場内の塗装や製品に含まれる酵母に絞ったため、農薬検出を確認するまで時間がかかった。この点についても今村教授は、「故意に異物を入れる人がいると想定していなかったがために、対応が遅れてしまったのでは」と指摘する。

今村教授によると、米国では工場内で製品の盗難が起こることを想定し、監視カメラを設置することが一般的だという。日本は性善説が根強い国だが、食品の安全を確保するためには、そうした考え方だけでは必ずしも成り立たないことを、今回の事件が突き付けたといえる。

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