従業員逮捕、社長辞任、マルハニチロ視界不良 2時間超す会見でも不明、農薬混入事件を覆う霧

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25日22時半から始まった会見は2時間以上に及んだ。マルハニチロHDの久代社長(左)とアクリの田辺社長(中央)

「危機管理体制が不十分だったと反省せざるを得ない」――。マルハニチロホールディングス(HD)の久代敏男社長は、こう言って頭を下げるしかなかった。

グループ傘下であるアクリフーズの群馬工場で製造された冷凍食品から農薬が検出された事件。同工場の契約社員逮捕を受けて、1月25日夜に緊急会見が行われた。マルハニチロHDの久代社長とアクリフーズの田辺裕社長は、そろって3月31日付での引責辞任を表明。容疑者が逮捕されたとはいえ、現段階では混入ルートも判明しておらず、明確な要因分析もできない中、いかに危機管理体制を強化できるのか。マルハニチログループの暗中模索が始まっている。

甘かった臭気の問題認識 

自主回収の対象となっているアクリフーズの冷凍食品

そもそも、事件発生時からの認識が甘かった。消費者から「ピザから石油のようなにおいがする」と、最初の問い合わせが来たのは昨年11月13日。

その後も立て続けに同様の連絡が入ったが、その原因を工場内の塗料の混入や製品に含まれる酵母による臭気と考え、原因の特定が遅れた。結果的に、農薬検出を確認したうえで、製品の自主回収を発表したのは昨年12月29日だった。アクリの田辺社長は「(臭気の原因特定に)大きな思い込みがあった」とうなだれるのみだ。

 また、工場内への私物の持ち込みは禁じられてきたが、今回の逮捕で従業員がひそかに農薬を工場内へ持ち運んだ疑いが一層強まった。これに対して、久代社長は会見で具体的な混入ルートには言及しなかったものの、グループ全体で「工場持ち込み禁止物の確認徹底などの再点検をすでに実施している」と、その可能性を認めるような発言をしている。

 アクリは2003年に食中毒事件などで揺れていた雪印乳業から旧ニチロが株式取得で子会社化したもの。株式取得の目的について、当時のリリースでは「ピザ、グラタンなど乳原料を主体とした、当社が従前取り扱っていない商品群に強みをもっております」と書かれている。

マルハグループの製造拠点によっては、監視カメラや工場内施設の移動を制限する施錠がきちんと行われているところもあり、会見でマルハニチロHDの佐藤信行品質保証部長は、「セキュリティのレベルは(アクリの工場と比べて)高い」と述べた。では、グループ化から10年を経て、なぜ管理体制の共通化などが推進されなかったのか。これに対して、田辺社長は「認識が甘かった」というのみだった。

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