マルハニチロ、低すぎた「食品提供者の責任感」 農薬混入事件で第三者検証委員会が指摘した中身

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会見に臨んだ伊藤滋マルハニチロ社長(写真左)。真一文字に口を結び、終始、緊張した面持ちだった。

水産大手で旧マルハニチロホールディングス(HD)のグループ企業だったアクリフーズ社製の冷凍食品に農薬が混入された事件を受け、第三者検証委員会による中間報告会見が4月30日に行われた。奈良県立医科大学教授で委員長の今村知明氏は「食品提供者として、消費者への責任感が不足している」と指摘した。

マルハニチログループではHDやアクリフーズを含むグループ計6社が合併し、マルハニチロが4月1日に発足している。中間報告会見に同席した新社長の伊藤滋氏は「指摘を真摯に受け止め、何がいけなかったのか一から見直す」と述べ、深々と頭を下げた。

検証委員会が指摘した問題点の一つは、マルハニチログループの意識の甘さだ。昨年11月13日以降、「製品から異臭がする」という苦情が数件入ったが、アクリフーズは当初、製造日や製品が異なることから一連の苦情に関連性はないと判断した。同社の品質保証担当役員も工場内の改装工事が原因と思い込み、意図的な異物混入を想定しなかったこともあり、外部への検査依頼が遅れた。その結果、農薬混入が判明し、事実の公表と製品回収に踏み切るまで1カ月半ほどを要した。

ガバナンスの問題点

この対応の遅れに拍車をかけたのが複雑な企業構造だった。アクリフーズはもともと雪印乳業の冷凍食品部門が独立した企業だが、マルハニチログループに入った後も品質保証も含めた経営に関し、HDが積極的に関与することはなかった。第三者委員の一人で、会見を欠席した久保利英明弁護士は「本件事件とアクリフーズのガバナンス上の問題点」という資料を提出。アクリフーズの親会社にあたるマルハニチロ食品(現、マルハニチロ)やHDのガバナンスについて、「(アクリフーズに対する)グリップはきわめて弱かった」と指摘している。

3月末までHD社長を務め、事件で引責辞任した久代敏男氏も3月末のインタビュー(関連記事「社長最後の日、マルハニチロHDのトップが胸中を告白」)で、「グループ統制の徹底がほかの会社に比べて緩かったかもしれない。どちらかといえば、各社が自主独立してやってきた」と答えている。久保利弁護士の資料によると、HDやマルハニチロ食品の非常勤役員2人がアクリの取締役会に出席するのは3カ月に1回で、「内部統制やグループ内ガバナンスに関する議論はなされず、業績の報告が中心であった」としている。

経営に対するグリップが弱く、責任の所在が明確でなかったことも致命的だった。アクリフーズは独自に調査を進め、結局、HDの久代社長に異臭の苦情があり検査をしているという報告がなされたのは、公表のわずか4日前だった。

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