ずさんな実態、マルハニチロは変われるか 農薬混入事件で検証委員会が最終報告書を公表
水産大手旧マルハニチロホールディングス(HD)のグループ企業だったアクリフーズで昨年起きた冷凍食品への農薬混入事件が一つの区切りを迎えた。大学教授らによる第三者検証委員会の最終報告が5月29日に行われた。
検証委員会は4月30日に中間報告を発表。HDのグループ企業に対するガバナンスの弱さや従業員の不満を察知する体制ができていなかったことなどを指摘していた。今回の最終報告では、それらを踏まえて再発防止のための提言がなされた。
一つは、あらゆるリスクを全社的に把握する新部門の設置だ。これまで、グループ各社で何か問題が発生しても、親会社であるHDに報告する体制ができていなかった。今回の事件に関していえば、アクリフーズはもともと雪印乳業の冷凍食品部門が独立した企業だが、マルハニチログループに入った後も品質保証を含めた経営に関し、HDは積極的に関与してこなかった。それが、農薬混入が判明するまで時間がかかる大きな要因になった。
リスク管理部門の新設を提言
検証委員会は、重大な問題が発生した際にはこのリスク管理部門へグループ各社・各部門が報告を上げ、このリスク管理部門が迅速に対応。必要な場合は社長に直接情報を上げる仕組みを提言した。
また、今回の事件では当初、農薬の毒性を過小評価してしまったことから、食品安全に関する高度な知識をもつ人材を置くことも求めた。それ以外にも、苦情相談センターの受付時間の拡大、製品の安全性を保証する検査体制の確立、工場内の死角を減らすために監視カメラを設置する、などの対策が盛り込まれている。
マルハニチロHDは4月にアクリフーズを含む5社と合併し、新たにマルハニチロが誕生した。最終報告の記者会見に同席したマルハニチロの伊藤滋社長は「提言を真摯に受け止め、全社、全グループをあげて再発防止に邁進する」と硬い表情で頭を下げた。
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