マルハニチロ、「すべて私の責任だ」 社長最後の日、トップが胸中を告白
――なぜ従業員がこのような事件を起こしたと思うか。
本人とは直接話しておらず、報道で知る限りの話だが、アクリが2012年に行った契約社員に対する賃金制度変更で、年収がダウンし不満があったと聞いている。部下と上司の密接な関係を築き、疎外感や孤独感を取り除く努力が足りなかったのかもしれない。
――12年にアクリは契約社員に対する賃金体系を年功序列型から評価給制度に変えた。能力給は会社が都合のいいように従業員を評価し、人件費を抑えるために使われるという見方もある。
アクリに非難すべき点があったとは思っていない。労働基準監督署の意見も聞いて、少なくとも従業員との話し合いは十分に尽くし、説明会もやったという。実施にあたっては(急な賃金の変動がないよう)移行措置も設けた。決してアクリのやり方が一方的で、世間の常識を逸脱していたとは思っていない。
――この制度変更については、親会社として把握していたのか。
個々の話は特に上がってこない。当時は人事業務が専門のマルハニチロマネジメントでいろいろやっていた。
――契約社員の賃金制度はマルハニチログループで統一されておらず、年功序列型が残っている工場もある。
会社の風土はそれぞれ違うので、いろんなやり方があってしかるべきと思う。
グループ会社は”自主独立”
――監視カメラの数もグループ内の企業や工場によって違う。いま振り返ると、管理体制を統一すべきだったと思うのか。
日本社会は性善説で「まさかうちの従業員に限ってそんなことをしないだろう」という考え方が暗黙のうちにある。だが、食品メーカーとして安心安全を確保しなければならない立場からすると、やはり抜かりはそうとうあったと感じている。
個人の人権や人格の尊重以前に、安心・安全を担保する方策が欠けていた。以前、中国製のギョーザ中毒事件(07年末に発生。その後の厚生労働省の調べでは、08年3月末までに全国で5915名が保健所への相談等を行った。有機リンによる中毒と確定した患者は10名)などがあったのだから、徹底したボディチェックや監視カメラの設置にもっと取り組むべきだった。
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