マルハニチロ、「すべて私の責任だ」 社長最後の日、トップが胸中を告白

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

われわれはグループ統制の徹底がほかの会社に比べて緩かったかもしれない。どちらかといえば、各社が自主独立してやってきた。アクリももとは雪印グループ(03年にニチロが子会社化)だったから。

従業員逮捕を受けて開いた1月の緊急会見。久代氏(左)は引責辞任をこの場で表明した。

わたしたちの工場が世間の水準から大きく遅れているとも思っていなかった。われわれの山形の工場を見学した大手食品卸会社の方に、「セキュリティ、清潔さ、従業員の勤務態度すべてひっくるめて日本一ですねと」と言われたこともある。しかし現実にはこういう事件が起きたのだから、何か欠けているものがあったのだろう。

――今後はもっとグループ内での統制を強めるべきか。

強めなければだめだろう。私のグリップが甘かったからこうした結果を招いてしまった。グループ会社で何が起きているかわからないようではだめだ。

――まだ事件の検証も終わっておらず、信頼回復の道半ばで辞任する。

個人的な悔しさよりも、グループがようやく良い方向に向かっていこうとする矢先に、こうしたことを起こしてしまったのが大変残念で悔しい。

ギョーザ事件が起きた時、私は役員として品質保証も担当していた。当時の社会の大混乱をよく知っている。今回、冷凍食品から検出された農薬は、残留農薬の比ではない濃度だったため、これは人為的なものだと思った。辞任して責任を取るしかないと思い、戸惑いや迷いはなかった。

伊藤滋次期社長は立派な人だから、何をすべきか重々承知のはず。結束して新しいリーダーシップのもとで乗り越えられると思う。 

 遅れた情報把握

――改めて当時のことを伺いたい。消費者から「製品から異臭がする」と最初に苦情がきてから公表まで1カ月以上かかった。危機感が不足していたのではないか。

足りなかったと思う。アクリが現場で解決しようとしていたのかもしれないが、私どもに話が上がってくるまでがものすごく遅かった。悪い話や不都合な情報が即刻トップに報告が来ないとグループ経営はできない。今回はその点が致命的だった。

アクリの親会社はマルハニチロ食品。その親がマルハニチロHD。いきなりアクリがHDに言って来るのは難しかったかもしれないが、構造的な問題があったのかどうかはわからない。

――アクリはマルハニチロ食品にすぐ報告していたのか。

そうでもなかった。だから致命的だったと思う。

――最初にこの事件の連絡を受けたのは。

「冷凍食品に異臭のクレームが来て、検査に出した」と私が聞いたのは昨年の12月25日。28日の夕方5時頃自宅に電話があり、品質保証担当の常務から「農薬が検出された」と連絡を受けた(マルハニチロHDが農薬検出と自主回収を公表したのは12月29日)。ギョーザ事件の時とまったく一緒じゃないかと驚いた。

次ページ信頼回復にどう取り組むのか
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事