ずさんな実態、マルハニチロは変われるか 農薬混入事件で検証委員会が最終報告書を公表

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同社は合併と同時に、伊藤社長を委員長とした「危機管理再構築委員会」を社内に新設しており、ここで今後の新たな体制作りを行っていく。具体的なロードマップには近日中にまとめ、公表するという。

事件の影響で稼働停止中の群馬工場については、監視カメラの増設など対策を施したうえで9月までに再開する。

プライベートブランドの問題点

今回の提言では、事件の背景として、プライペートブランド(PB)商品の問題も取り上げられた。PBとは小売り業者などが独自に企画・開発した製品のこと。アクリフーズはPBの生産を小売り業者から請け負っていた。

マルハニチロが回収対象とした94製品のうち、PBはおよそ20品(供給先は10社)に上る。報告書によるとPB製品は取引先ごとに個別の審査や規格があり、問題が起きた際の消費者への告知・回収方法も異なるという。このことが「大変な混乱を生んだ」と、検証委員会の今村知明委員長(奈良県立医科大学教授)は指摘。PBに関しては小売り側とあらかじめ事故発生時の対応などを取り決めておくべきとした。

また、検証委員会は、小売り側も企業の枠を超えて統一の規格を設けることや、製造を委託する食品メーカーへの共同審査、回収方法の共通化に取り組むべき、との提言も行った。実現すれば、小売り側にとっても作業負担の軽減につながるという。

ただ、「どんなに努力しても100%事件を防ぐのは難しい」と今村委員長は言う。万が一事件が起きた際にも、早期に対応できる体制を整えるべきだと訴えた。今回の事件を教訓にして、マルハニチロは変わることができるのか。真価が問われるのはこれからだ。

田野 真由佳 東洋経済 記者

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たの まゆか / Mayuka Tano

2009年に大学を卒業後、時事通信社を経て東洋経済新報社に入社。小売りや食品業界を担当し、現在は会社四季報編集部に所属。幼児を育てながら時短勤務中。

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