リモート参列も現れた「ウィズコロナの葬儀」 通夜振る舞いは省略、座席配置もソーシャル

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高齢化の進展で死亡年齢が高まったことにより、現役時代に築いた人間関係が希薄化。地縁、血縁関係も、時代とともに変化している。親しい親族だけで葬儀を営む「家族葬」が増加するなど、新型コロナとは関係なく、規模縮小など葬儀の多様化が進んでいた。経済産業省の統計から算出すると葬儀単価は2006年の152万円から2019年には134万円にまで下がっている。

近年では葬儀業界への異業種参入も増加。インターネットを活用して集客し、葬儀会社へ送客することで仲介手数料を稼ぐマッチングサービス会社も台頭してきた。小規模化による単価下落の一方、競争が激化しているのが業界の実態だ。

播島社長は「新型コロナで葬儀業界の構造変化が進んだ」と感じている(写真:燦HD)

「あくまでも感覚的なものだが、コロナによって構造変化が5年くらい、一気に先へ進んだのではないか」(播島社長)。コロナが収束すれば、一定の揺れ戻しは生じるだろう。だが構造変化の波を押しとどめることはできない。2040年以降は死亡数そのものが減少トレンドに転じることが予測されている。

死亡人口のピークアウトが待っている

燦ホールディングスは2019年度からスタートした新たな中期計画で「ライフエンディングのトータルサポート企業」という新経営理念を打ち出した。葬儀単価の下落、さらには死亡人口のピークアウトによる将来的な市場縮小も見据え、葬儀だけにこだわらず、事業領域を拡大させていくのが狙いだ。終活や葬儀後の相続、諸手続きなどのサポート事業を拡充。その一環で、今年4月に新会社を設立し、ライフエンディングのポータルサイト運営に乗り出した。

同事業では葬儀と墓からスタート。信頼できるパートナー企業のサービス・商品を紹介する。葬儀のマッチングサービスでは、送客のみで自社で施行しない会社も多いが、「葬儀を熟知している葬儀会社が自らマッチングを行うことに意義がある」と播島社長は語る。

足元のコロナ影響を乗り切ると同時に、長期にわたる構造変化にいかに対応するか。葬儀業界の試練はアフターコロナでも続く。

三上 直行 東洋経済 記者

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みかみ なおゆき / Naoyuki Mikami

1989年東洋経済新報社入社。これまで電機などを担当。現在は、冠婚葬祭業界を担当。

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