公益社では全国霊柩自動車協会の会員として、1985年の日航機123便の墜落事故の際には搬送業務などを支援。1995年の阪神・淡路大震災では、西宮山手会館を拠点に納棺や火葬場との交渉、搬送などに従事。2011年の東日本大震災のときは、救援物資の協力や、エンバーマー(遺体衛生保全士)を派遣して遺体のケアや納棺を手伝った実績がある。
なお、エンバーミングとは遺体に消毒殺菌・防腐・修復・化粧を施す技術。感染症対策になり、遺体の状態変化が軽減されるため、すぐに葬儀が難しい場合でも、遺体を安全に保存できる。ただし、新型コロナ感染者については有効性に関する科学的根拠が現状ではないため、公益社では実施していない。
新型コロナは通夜や告別式にも、大きな影響を及ぼしている。
葬儀やお別れの会の先送りも
感染予防の観点から、参列者の人数を絞り込む、通夜振る舞いなど飲食の提供を省略する、などの規模縮小が進んでいる。公益社が強みを持つ社葬では、延期もしくは中止が相次いだ。感染者が亡くなった場合、火葬からしばらく時間をおいて、葬儀やお別れの会を執り行うケースもある。中には一周忌のタイミングまで延ばす遺族もあったという。
公益社では消毒の徹底、ソーシャルディスタンスを意識した座席や焼香台の配置などを実施。「葬儀へのリモート参列サービス」も本格導入した。Wi-Fiや三脚などの関連機材を無料で提供し、遺族などが用意したスマートフォンやタブレットを使って葬儀の様子を撮影、配信する。「社葬では支店などに葬儀の模様を中継するケースもあり、もともとノウハウがあった」(北条氏)。
事前相談や葬儀の打ち合わせでも、要望に応じて、オンライン会議システムを使ってリモートで実施。これまで葬儀会館ごとに見学会や終活セミナーを開催してきたが、オンラインに切り替えるなど集客面での対応も急いでいる。
だが、「葬儀に関する構造変化は、新型コロナの感染拡大の前から、すでに始まっていた」と、燦ホールディングス社長で公益社社長も務める播島聡氏は打ち明ける。
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