「後妻業」と疑われた41歳女性の再婚に思うこと 他人にはぱっと理解できない幸せもある

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美香子さんは英語がまったくできない。そのうちに新型コロナウイルスによって外出禁止を余儀なくされ、「頭がおかしくなりそう」な孤独を味わっているらしい。いちばんのダメージは、愛知県で長く続けていた美容関係の店舗を閉じて、長くお世話になっていた顧客を「裏切る」形で渡米し、帰国もしにくい情勢になったことだ。

「仕事をしていないと人生を奪われた気分になることがわかった。毎日、料理しかすることがない。教会の人がZoomで英語を教えてくれたこともあったけど、実際に会ってもわからない言葉を画面越しに喋ってわかるわけがない。拷問みたいな1時間だったよ。窓を開けると、英語を喋っている子どもたちの声が聞こえてびっくりする。ほかの言語も聞こえたり。私が愛知でずっと住んでいた町は外国人が少なかったので、1年経っても慣れないな」

美香子さんはそれでも「結婚してよかった」と言い切る。お店を閉じたことだけは心残りだが、昔からの友達のような智弘さんが職場から帰ってくるのが待ち遠しい。

「早く帰ってこないかな~といつも思う。私はお酒をあまり飲まないけれど、トモヒロは飲む。そういうところも好き。私がゆっくり食事しながら会話もできるから。昔のお客さんに『男の人にあれこれ注文をつけていたミカちゃんがどうして年上のバツイチと結婚したの?』と聞かれたことがある。可もなく不可もないところかな、と気づいた。いい意味で気をつかわない。仲のいい友達と同じだよ。可もなく不可もないから長く友達でいられる」

不妊治療はうまくいかないけれど

独特の話し方で持論を語ってくれる美香子さん。現在、早くも結婚生活の「最大の山場」を迎えているらしい。不妊治療である。

両親は不仲で、自分も父親とは長年口をきいていなかった美香子さん。しかし、結婚して智弘さんと仲良く生活している今では、子どもを産み育てたいという気持ちが強い。愛知に住み続けている母親もよろこばせてあげたい。

「薬を飲んで痛い注射もしたけれど、ダメでした。卵子がほとんど採れなくて、凍結して保存することもできないと言われた。私がいま41で、夫は来年50になる。タイムリミットがあることは知っていたけれど、医療の力を借りてもダメなのかと思うと落ち込む」

Zoom画面越しで涙をこぼし始める美香子さん。智弘さんはそれほど子どもを望んでいないが、美香子さんの意思を尊重して協力してくれている。智弘さんは彼女のどんなところが好きなのだろうか。在宅中だったらしい智弘さんから「優しいところ」という声だけが飛んできた。

経歴と話し方から判断すると美香子さんを「優しい」とは形容しにくい。よくも悪くも後先を考えずに行動する人、という印象を筆者は受けた。

しかし、結婚相手である智弘さんは美香子さんの別のところをたくさん見ているのだろう。結婚とはお互いの優しさを引き出して温め合う関係を指すのかもしれない。10数年後、定年を迎えた智弘さんは帰国して、美香子さんの実家近くでおばちゃんたちに囲まれて楽しく暮らしている気がする。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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