東北地方のターミナル駅近くにあるメキシコ料理店に来ている。夕食をともにしながら結婚ストーリーを聞かせてもらうのは、医師の大西理恵さん(仮名、44歳)と医療業界で会社員をしている仁さん(仮名、51歳)だ。約束の5分ほど前に店に行くと、理恵さんと仁さんは先に座って待っていてくれた。
理恵さんは人懐っこい笑顔で可愛らしい雰囲気の女性。一方の仁さんは、頭髪は薄くなっているものの肌艶がよくスマートな体型で若々しい。丸っこい眼鏡もお洒落だ。2人とも異性から好かれそうなのに結婚したのはわずか5年前。それまではどうしていたのか。挨拶もそこそこに聞きたくなった。
お相手に敬遠される「女医」
「何でも聞いていただいて大丈夫です。言えないことは言えないとお伝えしますから」
気を利かせて話しかけてくれる理恵さん。医師としてのキャリアと仕事内容には満足し、充実した日々を送ってきたようだ。余裕と自信に裏打ちされた優しさを感じられる。いいお医者さんなのだろう。
「30歳ぐらいのとき、仕事はある程度落ち着いたので結婚したいなと思いました。職場によく思っていた同僚がいたのですが、お付き合いするには至らず……。婚活の本などを読んで理論的なことはいっぱい学びましたが、実践は足りませんでした。母親から半強制的に結婚相談所に入れられたこともあります。でも、誰とも会わずに退会してしまいました」
理恵さんが職場である病院以外での出会いに躊躇したのは、女性の医者という立場も影響していると思う。とくにお見合いでは男性から敬遠されがちなのだ。
「女性は医学部生のうちに相手を見つけておいて、少なくとも医者になって2年目までに結婚する。そうしないと一生結婚できないことが多い。これ、医学部のあるあるです」
35歳を過ぎてからは理恵さんは意識的に「このまま独身の人生なんだな」と自分に言い聞かせることにした。結婚したいと言い続けていてできなかったら苦しくなるからだ。そして、1人では寂しいという気持ちは押さえつけた。
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