異性に「モテない職業」39歳女医が結婚できた訳 気乗りしない紹介で出会った「大親友」

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仁さんのほうはどうなのか。先ほどから自然な動きで食器を配ったり料理を取り分けたりしてくれつつ、理恵さんと筆者の話を静かに聞いている。丁寧でフラットな印象を受ける男性だ。

「私もずっと独身で、かつ転勤族です。若い頃は北関東を担当していて、東北地方に来たのは36歳でした。10月でも真冬の寒さで、毎日雪が降っていたのを覚えています。よそ者はとりあえず遠巻きに見ているような土地柄です。あまりに寂しくて、初めて『結婚しておけばよかった』と強く思いました」

苦い思い出を淡々と語る仁さん。元来は「1人が好き」な性格のようだ。

「私は営業職なので、仕事ではずっと話しています。プライベートでも人と話さなくちゃいけないと思うと疲れます。関東地方にいた頃は自分の時間を確保したいとばかり思っていました。でも、初めて関東を離れて、あの東北の町に住んだ4年間は本当に独りぼっちだったんです。鉛色の空で、寒くて寒くて……」

関東地方にいた頃は、建築業を営む大家さんと親しくしていたこともあるという仁さん。不思議な可愛げのようなものがあり、とくに年上から目にかけられやすいようだ。しかし、東北地方での最初の赴任地では誰とも親しくなれず、その「1人好き」にも限界が来た。結果的に言えば、このときの苦しさが仁さんを結婚へと導いたのだ。

さらなる転勤先は同じく東北地方だがオープンな土地柄だった。仁さんは「自然な出会いがあれば結婚したい」という気持ちがありつつ、趣味などで知り合った人間関係に満たされる日々になった。そしてまた5年の歳月が流れる。

「恋のときめき」はなかったけれど…

仁さんと理恵さんを結び付けたのは、なんと華道である。正確には、仁さんは理恵さんの母親と同じ華道の教室に通っていた。相変わらず年上から好かれる仁さんは「うちの娘に会いなさい!」と命令されたのだ。

「妻と会う日の1週間前になって初めて『実はね、うちの娘は医者なのよ』と明かされました。私は仕事で医療関係者と会うことが多いので、できれば全然違う業界の人との出会いを希望していたのですが……。でも、医者だから会わないのは失礼になってしまうと思いました」

律儀だけれどあまり積極的ではなかった仁さん。一方の理恵さんは完全に後ろ向きだった。母親からは仁さんとのお見合いを1年前から打診されていて、断り続けていたのだ。

「結婚することはほぼ諦めていたからです。母から仁さんの写真も見せられましたが、私の好みはミスチルの桜井さん。仁さんとはタイプが違います」

喫茶店で初めて会ったときも理恵さんは「恋のときめき」はなかったと振り返る。ただし、お互いにコーヒー好きであることがわかり、仁さんの少しマニアックなコーヒー話も楽しく聞けた。

「帰り道でも運命みたいなものは感じませんでした。『やっぱり私は結婚しない人生なんだな』と思ったぐらいです。でも、家に帰ってから、じわじわと仁さんのことを思い出しました。悪い印象はなかったな、居心地はよかったな、安心感もあった、などです。なんだろう、この感覚はと思っていました」

仁さんのほうも理恵さんとの相性に「自然さ」を感じたらしい。連絡先を渡し、理恵さんからの連絡を待った。

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