「政府は愚かだ」と批判する人が気づくべき真実 なぜ人々はコロナをさほど恐れなくなったか

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まず仮説1は「新型コロナウイルス自体が変化し、それほど恐れる必要がなくなった」という説である。

「ウイルスが弱毒化した」とか、「若年層への広がりなので大丈夫だ」、などの解釈をしている人々もいるようだ。しかし、弱毒化はほとんど根拠がないし、若年層から高齢者層に広がるのはこれからだ、という議論には対応できない。この仮説を採る人々の心理に対する私の解釈は「そう信じたいから信じている」、ということだと思う。

4月は「異常反応」、政府は「国民のいいなり」

仮説2は「コロナウイルス自体は変化していないかもしれないが、人々は、新型コロナをもはや恐れなくなった」という説だ。

これは、現実に当てはまると私は見ている。「なぜ今や恐れないのか」というよりも「4月になぜあれだけ恐れていたのか」の方が正しい謎であって、4月と7月で反応が違うことは「ベンチマークをどちらに採るかの違い」であり、4月の方が異常反応だったと思われる。

ちなみに、政府の対応がまるで違うのは、この人々の反応をそのまま反映しただけで、政府は何も変わっていない。良くも悪くも、ポピュリズムで、国民の言いなりに動いているだけだ。ただ、動きが遅いので、人々が数週間から1カ月前に要求したことをやっているので、人々の要求が1カ月で大きく変わってしまうと、政府の対応が間抜けに見えるだけのことだ。「何をいまさら」と批判を受ける。

実際「マスクがない、韓国ではマスクを配布している」という声が高まったのが3月で、それに官邸の腰の軽い官僚が乗っかっただけなのが、アベノマスクである。「Go Toキャンペーン」も、「地方がかわいそうだ、疲弊している、スナックなど夜の飲食店、観光地の人々を救え」、という世論が高まっていたことに反応した。実際、地方の観光団体、旅行代理店業者たちも悲鳴を上げていたので、浮動票の人々への人気取り、および固定票の支持者たちに対する利益誘導で動いただけで、典型的な政治的政策である。

それがここまで批判を浴びるのは、対応が稚拙だったとは言え、少し気の毒だ。「政府は愚かだ」と批判している人々は、「1カ月前の自分は非常に愚かだ」、と言っていることに他ならないことに、そろそろ気づいたほうがいい。そして、世の中を動かしているのは、官邸ではなく、世論でありメディアであることに気づかないふりをするのはやめるべきだ。

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