問題多い高速道路の無料化、値下げして永久有料にし、高速会社は真の民営化を
政府は2月2日、マニフェストの目玉政策の一つである高速道路無料化について、2010年度から実施する37路線を発表した。無料化の「社会実験」と位置づけ、6月をメドに開始。同時に、前政権が昨年3月から実施してきた「休日上限1000円」の割引制度は廃止する。
無料化路線は主に地方の路線となり、東名高速道路など混雑・渋滞が予想される路線は対象から除かれた。とはいえ、高速道路無料化は非常に問題の多い政策だ。
崩れる受益者負担の原則
マニフェストによれば、高速道路無料化は、物流コストを減らして物価を下げることや、地方経済を活性化させるのが狙いだ。民主党は03年の衆院選からマニフェストに掲げ、経済効果をアピールしてきた。
だが、その経済効果には疑問符がつく。
まず、混雑・渋滞が増え、高速移動のメリットが減殺される。物流・観光業者にとっては、高速道路料金分のコストが下がっても、運転手の拘束時間が長くなるなど別のコストが上昇する。実際、高速バス会社などが無料化に反対している。
また、そもそも混雑・渋滞を避けるため、実験を経て最終的な実施路線を限定すればするほど、経済効果は小さくなる。
環境政策とも逆行する。CO2排出量の少ない鉄道やフェリーからの交通シフトが避けられないからだ。
最大の問題は、高速道路の利用者が料金支払いによって建設や維持管理などのコストを負担するという、受益者負担の原則が崩れることだ。
日本では、戦後、高速道路網の整備を始めるとき、財源不足がネックだったため、財政投融資資金など借入金(債務)で造ることにした。欧米主要国では、一般道路と同様、税金で高速道路を造っているため、原則無料となっている。