問題多い高速道路の無料化、値下げして永久有料にし、高速会社は真の民営化を

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 日本では、利用者から料金を徴収し、債務を完済するまでの間、高速道路を有料としたのである。無料化すると、債務返済を税金で肩代わりするため、国民全体で負担することになる。

高速道路が原則無料の欧米主要国では、むしろ有料化の傾向にある。ドイツでは、アウトバーンを走る大型トラックに課金を始めている。国外から多数流入する大型トラックの影響で路盤が傷んでも、補修費はドイツ国民の税金で負担してきたからだ。米国や英国でも、有料化に向けた検討が始まっている。「海外では無料制への反省から、受益者が負担すべきという流れが強まっている」(中条潮・慶応義塾大学教授)。

日本では、旧日本道路公団が長い間、高速道路(高規格幹線道路)の事業主体だった。さらに本州四国連絡橋、首都高速、阪神高速の3公団を加え、道路関係4公団と呼ばれた。4公団は05年10月に、6社に分割・民営化。民営化したのに、昨年から政治介入で料金が引き下げられた。宮川公男・一橋大学名誉教授は、「民営化した会社が自由に料金を決められないのはおかしい」と憤る。

日本の高速道路の料金制度には、三つの大きな特徴がある。(1)プール制、(2)画一料率制、(3)償還主義・償還後無料開放の原則だ。

プール制とは、全路線の収入で全路線の建設コストなどの債務を返済する仕組みのこと。黒字幅の大きい東名高速などの“利益”によって赤字路線を含むネットワークを形成してきた。また料率については、大都市近郊を除き、全国どこでも1キロメートル当たり24・6円と決められている。

償還主義とは、債務返済後に高速道路を無料開放する約束のことだ。05年に4公団が民営化されたとき、約40兆円あった債務を料金収入によって50年までの45年間で返済し、その後無料開放することになった。

三つの特徴のうち、プール制には納得できる理由がある。路線ごとの個別採算制にすると、新しく完成する建設コストの高い路線ほど料金がどんどん高くなってしまうからだ。

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