英アームの中国合弁「内紛劇」解決できない真相

ソフトバンクの売却計画に影響の可能性も

アームの中国合弁会社では株主と経営者の泥仕合が2カ月近くも続いている(写真はアーム中国のウェブサイトより)

イギリスの半導体設計大手のアームが、中国の合弁会社「アーム中国」で生じた内紛劇の収拾に手間取っている。アームは6月4日、中国側株主を代表するプライベートエクイティ(未公開株)ファンドの厚朴投資とともに合弁会社の取締役会を召集し、アーム中国の董事長兼CEO(会長兼最高経営責任者)を務める呉雄昂(アレン・ウー)氏の解任を決議した。

ところが呉氏は、この決議は合法的プロセスを経ていないと主張して退任を拒否。アーム中国の従業員の一部も呉氏の続投を支持しており、両者の対立が2カ月近くも続いているのだ(訳注:呉氏の解任決議までの経緯は『英アームの中国合弁トップが突如解任のなぜ』を参照)。

そんななか、呉氏を支持する従業員が7月28日にSNS(社交サイト)を通じて公開書簡を発表。「アーム本社と厚朴投資が中国の顧客や従業員に個別に接触し、脅迫や撹乱を行っている」と非難するとともに、中国の関係当局に対して「争いを合法的かつ合理的に解決し、合弁会社が1日も早く正常な軌道に戻れるよう、直ちに介入してもらいたい」と訴えた。

合弁会社の実印と営業許可証の引き渡しを拒否

これに対してアーム本社は7月29日、財新の取材に応じて以下のように反論した。

「取締役会による呉氏解任の決議は合法かつ有効だ。しかし呉氏はそれを認めず、合弁会社の公章(実印)の引き渡しを拒んでいる。さらにウソの情報をあちこちにまき散らし、アーム中国の社内に大きな恐怖と困惑を生じさせている」

アーム本社によれば、合弁会社の取締役会は中国の関係当局とも緊密に連絡をとっている。呉氏の行動が、合弁会社と顧客および従業員との関係をこれ以上傷つけないよう、穏便な解決に向けて努力しているという。

取締役会で決議したのに呉氏を更迭できない背景には、合弁会社の代表者変更手続きをめぐるパラドックスがある。企業の法定代表者が交代する場合、所轄当局に提出する文書に公章を押さなければならないが、呉氏が公章と営業許可証の引き渡しを拒んでいるため手続きが進まない。公章を新たに作り直そうとしても、その手続きには法定代表者の立ち会いと営業許可証の原本の提示が必要で、それもできない手詰まり状態なのだ。

本記事は「財新」の提供記事です

アーム中国の株式は厚朴投資など中国系のコンソーシアムが51%、アーム本社が49%を保有している。アームは日本のソフトバンクグループの傘下にあるが、ソフトバンクはアームの売却や上場を検討中だ。しかし中国合弁会社の内紛が解決しなければ、ソフトバンクのもくろみにも影響が及ぶかもしれない。

(財新記者:張而弛)
※原文の配信は7月29日

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