「料理は女の仕事」と勘違いする男が超厄介な訳 定年退職した後も妻に料理を任せる気?

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母「あんたたちはエラいわねぇ〜」

筆者「えっ? なんで?」

母「やっちゃん(父のこと)なんてね、何を出しても『おいしい』なんて言わないでただ黙々と食べているだけなのよ。作っている側としては反応してもらえないとむなしいのよ、これが」

妻「だって本当においしいですよ!」

筆者「別に『おいしい』なんて言うのは簡単なことなので素直に思ったことを言ってるだけだけど」

母「それが年を取るとできなくなるのよね……」

現在74歳の父は多分料理はできないと思う。今までに彼の作った料理を一度も食べたことがない。料理に近いことをやったのは、出張先の岡山で大量にもらってきた蝦蛄(シャコ)を母親に塩ゆでしてもらい、それを父がハサミを使って身を次々と出してくれたことぐらいか。

あとは中高時代アメリカに住んでいたころ、庭にBBQのグリルがあったのだが、それに火をつけ、ステーキを焼いてくれたことはあった。だが、これはアメリカの男のマッチョ思考にも似ており、「BBQで肉を焼くのは男の仕事!」的メンタリティーがあったのでは。

妻が料理をしなくても「家庭円満」な理由

そして現在のわが家である。料理担当は私だ。妻は食器洗いをしてくれる。なぜこうなっているかといえば「私は料理が苦手だから中川さんやって」(妻)という状況にあるからだ。

『意識の低い自炊のすすめ 巣ごもり時代の命と家計を守るために』(講談社)。書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

一方、私は食器洗いは苦手なので、この役割分担が互いに心地よい。私も彼女も飲み会がない夜は、2人して18時頃からキッチンでちょっとした酒のさかなをツマミにビールを飲み始める。このとき、夕食用によく作るのは「作り置きできるもの」だ。

私は飲み会が多いため(コロナ禍の前のこと)、朝ごはんは毎日作れるものの、夜は作れない。しかし彼女は料理が苦手で本当はやりたくない。1人で外食するのも苦手なのでやりたくない。そんなときに、この“キッチン居酒屋”をしながら作った料理を活用するのだ。大量に作っておき、その晩食べる分以外はすべてタッパーに入れてしまい、それを彼女は翌日の夕食にする。

料理が完成すると「私の生命線。これで3食分になる。助かった」といつも彼女は言う。この大量作り置き料理で便利なのは、「カレー」「キーマカレー」「ミートソース」「マーボー豆腐・マーボー野菜」「豚肉しょうが焼き」「鶏肉そぼろ」「ブリ大根」「タコス」などだ。

カレーの場合は汎用性が高くライス、パスタ、うどんのいずれでも食べることができ、キーマカレーはライス以外にもスーパーで買ってきたナンで食べることができる。とにかく煮込むタイプの料理で汎用性が高いものを大量に作っておくと、料理の苦手な家人にとっては救いの神となる。

作る人は家族の誰でもいい。やりたい人、得意な人がやればいいし、もっというと料理をするのが楽しくて仕方がない人がやればいい。

中川 淳一郎 著述家、コメンテーター

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なかがわ じゅんいちろう / Junichiro Nakagawa

1973年東京都生まれ。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライターや『テレビブロス』編集者などを経て、出版社系ネットニュースサイトの先鞭となった『NEWSポストセブン』の立ち上げから編集者として関わり、並行してPRプランナーとしても活動。2020年8月31日に「セミリタイア」を宣言し、ネットニュース編集およびPRプランニングの第一線から退く。同年11月1日、佐賀県唐津市へ移住。ABEMAのニュースチャンネル『ABEMA Prime』にコメンテーターとして出演中。週刊新潮「この連載はミスリードです」他連載多数。

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