「80歳まで雇用延長」が迫るキャリア戦略の激変 雇用年齢上限の引き上げは年功序列を崩すか

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こうした戦略転換を実現するためには、世界統一の人事制度が必要になる。そこで2012年度からグローバル人事制度の開発に着手。世界25万人のグローバル人材データベースの構築を進めるとともに、幹部候補生400人を選んで「グローバル・リーダーシップ・デベロップメント」というプログラムを開始した。

2013年から2014年にかけて、世界のマネジャー以上の職を格付けしてグローバル・グレードを策定。これに基づく評価報酬制度も構築した。

一連の人事制度変革の結果、現在では、全職種において「ジョブ・ディスクリプション」(職務記述書)が整備され、その職種に就くために必要なスキルや経験が明らかにされている。こうした変革は、大きなメリットを生んだようである。

第1に、社員が自分でキャリア形成を考えるようになり、自分が就きたい職種を選んで、そのためのスキルを自主的に身につけるようになった。第2に、各職種の職務内容と期待水準が明らかになったので、結果や成果物で上司が部下を評価することができるようになり、人事評価が透明化された。第3に、グローバルスタンダードな人事制度に変えたことで、海外人材の採用が容易になった。

さらに、ジョブ型雇用では職種の仕事内容によって給与が決まるため、年功序列の色彩がなくなった。実はこれがいちばん重要な変化である。勤務年数や年齢などではなく、担当している職種のグレードで給与が決まることになったのだ。

同社では、こうした実力本位の人事制度を生かして、将来は50代前半の人を社長にしていきたいと考えているようである。その一方で、ジョブ型雇用に転換することで、エイジフリーの会社にしていきたいとも考えているという。

ジョブ型を後押しする定年延長問題

このように、ジョブ型雇用の導入がエイジフリー化につながっていくとすると、1つの疑問が湧いてくる。ジョブ型の導入は定年延長と両立できるのか、というものだ。

日本では、急速な少子高齢化の進展により、生産年齢人口の低下が始まっている。同時に、高齢者を支える年金財政の悪化を解決するべく、2013年に「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が改正。企業は65歳まで雇用機会を与える義務を負うようになった。

多くの企業では、従来のメンバーシップ制の下で続いてきた60歳定年制を維持しつつ、65歳までの再雇用制度を導入している。雇用は維持してもらえるものの、「半メンバー」となった60歳以上の社員の給与は定年前の2分の1や3分の1に下がるという前提である。

2021年には「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」が再び改正され、70歳までの就業機会の確保が努力義務にされる予定である。冒頭で触れたノジマの雇用上限延長は、一連の動きに対応するためのものだ。

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