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この事実が示すのは、ネットワーク効果により、消費者の効用の増加が「製品の品質の向上とは関係なく起こる」ことである。例えば、LINEは国内月間アクティブユーザ数8000万人の大人気サービスである。しかし、それを見て私がまったく同じサービスを開発して今リリースしても、誰も相手にしてくれないだろう。

まったく同じ財でも、ユーザ数によって消費者にとっての価値が大きく異なる。いうなれば、コストをかけて品質を向上させずとも、ユーザ数が多いというだけで、消費者にとっての魅力はどんどん上がっていくのである。

このように、品質の外部で消費者の効用・需要が変化することから、ネットワーク効果は「ネットワーク外部性」ともいわれる。そして、どのようなビジネスでも、高利益化の鍵は、コストをかけずに消費者の需要を拡大することだ。したがって、品質を改善しなくても消費者の効用が増加するというネットワーク効果は、高利益化の非常に強力な手段となる。

そのため、電話に限らず、古くからさまざまなサービスがネットワーク効果を利用して市場の大きなシェアを占めてきた。ビデオ規格、ポケベル、パソコンのOS、家庭用ゲーム機など──。

しかし近年、このネットワーク効果にさらに「フリー」という要素を組み合わせることで、ケタ違いのビッグビジネスが生まれるようになってきている。

フリーでクリティカル・マスを超える

ネットワーク効果が働く製品・サービスにおいて最も重要なのが、最初に一定数以上の顧客を獲得することである。なぜならば、「ユーザ数が多いほど効用が高い」ということは、裏を返せば「ユーザ数が少ないと効用が低い」ということだからだ。

このため、最初に一定数の顧客を獲得しなければいつまでも期待効用(消費者が購入前に期待する効用の大きさ)が低いままで、誰も購入・利用してくれないのである。

製品・サービスの普及率を時系列で追ったグラフ、普及曲線を考えてみよう(図1)。ネットワーク効果が働く財は、普及率がある点を超えると、期待効用が十分に高まることで正のフィードバックが働き、爆発的に普及する。このとき、普及曲線はS字を描くこととなる。

(外部配信先では図を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

図1 普及のS字曲線とクリティカル・マス

この急激な普及が始まる普及率のことを、「クリティカル・マス」という。ネットワーク効果が働く製品・サービスの場合、普及率がクリティカル・マスを超えることが、ユーザ数の爆発的な増加の条件となるのである。

そして、普及率のクリティカル・マスを超える方策として、フリーは非常に強力な武器となる。なぜならば、フリーというのは消費者にとって究極の参入コスト低減であり、気軽にその製品・サービスを利用することができるためだ。

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