高橋泰教授が新型コロナをめぐる疑問に答える

暴露と感染の広がり方、PCR検査の問題を解説

高橋泰(たかはし・たい)/国際医療福祉大学大学院教授。金沢大学医学部卒、東大病院研修医、東京大学大学院医学系研究科修了。東京大学医学博士(医療情報)。スタンフォード大学アジア太平洋研究所、ハーバード大学公衆衛生校に留学後、1997年から現職。社会保障国民会議や日本創生会議などで高齢者の急増、若年人口の減少に対応した医療・介護提供体制の整備の必要性を提言。地域医療構想などの先鞭をつける。2016年9月より内閣未来投資会議・構造改革徹底推進会合医療福祉部門副会長。新型コロナウイルスについて、東京都の専門家会議では年代別対策の提言が取り上げられた(撮影:尾形文繁)

――サイトカイン・ストームについてもう少しご説明ください。

インフルエンザなどの外敵侵入により生体が危機に陥ると、生体防衛の仕組みが働く。免疫を担当する細胞をはじめとする種々の細胞のネットワークが、サイトカインと呼ばれる生理活性物質を産生・分泌することにより、攻撃を命令する。それが適量だったら免疫が適切に調節されウイルスを撃退して終わる。

サイトカイン・ストームの発生機序はまだよく解明されていないが、私の研究チームは、生体防衛のシステムが相手を過大評価してサイトカインを大量に放出し、例えると、ミサイルが10基でよいところ、100基で攻撃し、ウイルスだけでなく自身の正常細胞も傷つけてしまうという現象だと考えている。

新型コロナではこれにより異常な血液凝固が起き、全身に血栓ができやすく、そのことでさらに状態が重篤化することが報告されている。

前回の図で、「ステージ5~6で凶暴化」としたが、ウイルス自体の性格が変わるのではなく、生体のほうが慣れないウイルスなので過剰反応してしまい、自爆するというのがより近い表現だ。

日本人の重症化率・死亡率が低い3つの要因

――次に日本と欧米との違いを簡単におさらいしてください。

日本が欧米と違う点は3つ。第1に環境面だ。リスクの高い高齢者をウイルスから隔離する仕組みが高齢者施設で徹底し、高齢者一人ひとりの自主的な隔離も行われていたこと。もともとインフルエンザウイルスやノロウイルスへの対策が徹底していた。第2に自然免疫。欧米に比べて何らかの理由で強く、BCG説など有力な説がある。第3に体質。日本人は欧米人に比べるとサイトカイン・ストームの起きる率が低く、起きても血栓ができにくく、重症化しにくい。

リスクの高い高齢者の暴露率を日本は欧州と比べ1/4、自然免疫力の差によりしっかりした症状が出てしまう発症率の差は欧州人の1/10、サイトカイン発生により死亡する可能性を欧州人の1/2.5とすると、4×10×2.5=100で日本の死亡率が欧州各国の約1/100という関係を説明できる。3つの数字の設定はさまざまな情報から私が予測したものにすぎないが、数字を変えるとき、3つを掛け合わせれば100になる関係であることが必要だ。

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