――「PCR検査でたまたま見つかっただけ」というお話でした。しかし、テレビではこの数ばかり報道して「第2波が来た」としています。先生はPCR検査を拡大することの問題点も指摘されています。
なぜ、「PCR検査陽性者数」を重要視するのかと疑問に思う。新宿や池袋では特に、感染事例が多いとして、今、検査を盛んに行っているので、ある事例を上の図で見てみましょう。仮にPCR検査をしていたら陽性になる状態をPCR陽性期間、陰性になる期間をPCR陰性期間としましょう。
人が密集し他人との飲食も恒常的でほぼ毎日新型コロナにさらされる、つまり暴露しやすい環境にある人がいたとする。そこで感染すれば、PCR陽性期間に入る。その後、無症状のまま自然免疫で撃退してしまうと、ウイルスの遺伝子の残骸が消失して、PCR陰性期間に入る。
ところが次に感染したら、無理もしていたので、自然免疫で撃退できずに熱が出て一週間寝込んだ。この間はPCR陽性期間になる。でも若くて基礎疾患もなかったので、獲得免疫で撃退して治り、抗体ができて、これ以降、抗体検査をすればずっと陽性になる。しばらくしたらPCRは陰性期間に入る。その後、またしても感染したら、抗体ができているので発症はしないのに、PCR検査は陽性期間に入ってしまう。
PCR検査の「陽性」「陰性」が隔離に使えない理由
この例でもわかるように、抗体があるのにPCRは陽性になりうるし、PCR陰性といわれても次の日には暴露して陽性かもしれない。このことがほとんどの人に理解されていない。PCRの「陰性」が意味するところは、「検査時の前1週間程度は、新型コロナに感染していないこと」であり、2週間前に感染していた可能性や検査直後の感染可能性はまったく否定できない。企業が採用のために「PCR検査を受けてこい」といったなどという話があるが、「陰性証明」などほとんど意味がないのではないか。
前回も話したが、感染者に照準を当てて無症状者の検査をどんどん拡大して、陽性者の入院や隔離を行うことは、医師や看護師など医療従事者に過大な負担をかけ、医療資材を費消する。肝心の重症者に手が回らなくなるおそれがある。また、無症状なのに入院・隔離させられた人の社会・経済活動を制限するので、社会全体にとって大きな損失だ。
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