「AIを使った感染対策」アジアと欧米の差の背景 中国や韓国ではビッグデータを効果的に活用

✎ 1〜 ✎ 68 ✎ 69 ✎ 70 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
人工知能を用いた感染対策には地域差もあるようです(Graphs / PIXTA)
国境を越えたコロナの感染拡大は、人類の歴史、そしてこれからの未来にどのような影響を及ぼすのでしょうか。大野和基氏編『コロナ後の世界』からマサチューセッツ工科大学教授のマックス・テグマーク氏によるAIとコロナの戦いに関する箇所を一部抜粋・再構成してお届けします。

私の住んでいるマサチューセッツ州は、ニューヨーク州やニュージャージー州などと並んで新型コロナウイルスの感染者が多く、9万人を超えました(5月23日時点。以下同)。全米で最悪のニューヨーク州より死亡者数が多い日もあるほどです。

正直に言って、かなりひどい状態です。3月下旬にロックダウン(都市封鎖)されましたが、外出禁止といっても自粛のようなものです。

私の出身地であるスウェーデンでは、首都のストックホルムでもロックダウンしなかったので国際的に注目されました。スウェーデンの人口は約1000万人で、死亡者は3925人です。

人口100万人あたりの死亡者数で周辺国と比較すると、スウェーデンは389人ですから、国境制限や学校閉鎖をしているフィンランド(55人)、ロックダウンに踏み切ったノルウェー(43人)より、だいぶ悪いのです。

もっと興味深い数字があります。マサチューセッツ州100万人あたりの死亡者数が900人なので、スウェーデンよりもはるかに多い。このデータから結論できることは、決してスウェーデンが素晴らしいのではなく、ロックダウンしているにもかかわらずマサチューセッツ州の対策がひどすぎるということです。

トランプはコロナを過小評価していた

ご存じの通り、アメリカには健康保険に入っていない貧困層が多いですし、失業保険に加入していない人もいます。外出禁止でも彼らは働きに出ないと生きていけません。問題が多いのは、ほとんどがボストンの最貧困地区なのです。

当初、新型コロナウイルスの脅威に対して、ドナルド・トランプ大統領は間違いなく過小評価していました。そして多くの人が、政府はパンデミックに対して十分な準備をしているのだろうと過大評価をしていたのです。

感染が広がりはじめても、政府にはきちんとした防疫対策があるはずだと思っていました。医療用マスクは十分な備蓄量があり、必要であればPCR検査も即座にしてもらえるのだろう、と──。

次ページAIはコロナ感染拡大で何ができたのか
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事